大失速の日産「ゴーンの呪い」いまだ抜け出せず? V字回復に向けた急務とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月28日 5時45分
●いまだ「ゴーンの呪い」から抜け出せていない
日産は3月にルノー傘下を外れて初めての中期経営計画を策定。2027年3月期に世界での販売台数を450万台前後に引き上げる計画を公表しました。しかし、今回の工場閉鎖計画によって、世界での生産能力自体は400万台まで減少する見込みに。計画策定からわずか半年で、主軸である販売台数計画自体がとん挫したことになります。この間、経済状況に特段大きな変化があったわけではなく、経営の見通しの甘さは目に余るレベルであり、内田社長の経営者としての資質には疑問符が付くところです。
今回の発表では、日産が保有する三菱自動車株のうち、約3割を売却することも明らかにしています。この株は、三菱自動車が2016年に燃費試験の不正問題を起こして経営危機に陥った際、日産サイドからの「救済策」として取得したもの。このとき、三菱自動車はルノー=日産グループ傘下に入っています。
今回の発表は、日産が遅れを取り戻すための開発費に加え、工場閉鎖や退職金などの費用負担増によって、グループ企業の持株を売却しなければならないほど資金面でも苦境にあることを示しています。
今後、米国はトランプ政権への移行によって、メキシコからの輸入で大幅な増税が予定されており、メキシコに主要製造拠点を持つ日産にとって、さらに収益面の追い打ちとなることは予想されます。日産の業績急降下は、事態の進展によっては巨額赤字転落による、経営危機にもつながりかねないところです。大株主に旧村上ファンド系の投資ファンドとみられる名前が入ったことも判明し、一部で噂される業務提携先のホンダによる資本参加、買収も現実味を帯びてくるかもしれません。
苦境に陥った日産を復活に導く対応策は、まず何よりいまだ抜け出せないゴーン独裁およびルノー支配下経営で築かれた、悪しき経営風土からの脱却ではないでしょうか。すなわち、内田社長を含めた経営陣の刷新による人心一新こそ、最優先で取り組むべきだと思われるのです。「ゴーンの呪い」を解いて、リバイバルプランならぬサバイバルプランを一刻も早く軌道に乗せることができるのか。業界大変革の時代に、日産に残された時間は決して多くはないでしょう。
著者プロフィール・大関暁夫
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
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