気が重い「督促業務」をデジタル化、未回収率50%→1%に 「血を流しながらやってきた」スタートアップの挑戦
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月28日 8時10分
Lecto代表取締役社長 小山裕氏(著者撮影)
埼玉県・千葉県・東京都で認可保育園を運営するALTA(さいたま市)はこの9月、未納保育料の支払いを自動で督促するSaaSの導入を決めた。保育園が「債権督促」ツールを導入したのは、どのような背景があったのか――。
実は、銀行や消費者金融向けの債権管理システムが、金融業界の外へと活用の場を広げている。
債権管理・督促回収の自動化ツールを手掛けるスタートアップLecto(東京都港区)が提供するシステムだ。
保育園での保育料徴収から、自治体の新型コロナウイルス関連融資の返済管理まで。人手不足に悩む現場で、督促業務のデジタル化が動き出している。
●「職員の心理的な負担も増加していた」
ALTAは1都2県で30の認可保育所および小規模保育事業所を運営している。同社が督促システムの導入に踏み切った背景には、急激な事業規模の拡大がある。既存のシステムでは請求金額の計算に不具合が生じ、会計システムへの不規則な情報入力が増加。スムーズな保育料請求が難しい状況に陥っていた。
「保護者のみなさまに正確に連絡するために最大の注意を払いながら業務を行っており、職員の確認作業の工数や心理的な負担も増加していた」と同社は説明する。Lectoの小山裕社長は「人を預かる仕事をしている中で、お金の管理は後回しになりがちだ」と指摘する。
●未収金の増加リスクは高まっている
人手不足の中、本業とは異なる性格を持つ督促業務を、デジタルの力で解決したいと考えるところは多い。
愛知県常滑市社会福祉協議会は生活困窮者向けのくらし相談センターで同システムを導入した。同協議会では、病気や失業など何らかの理由で生活が立ち行かなくなった人にハローワークと連携した就業支援や、生活再建のためのサポートを実施。必要に応じて貸付金による支援も行う。
「リソースが潤沢にある状況ではなく、紙で管理しているので返済が滞っているなどの状況を把握するのも一苦労。なかなかタイムリーに連絡を取ることや対象者の方に定期的に連絡することが難しく、もどかしさを感じていた」。同協議会の担当者は、Lectoが行ったヒアリングの中で、これまでの課題をこう明かす。
システムの導入で、対象者への定期的な連絡が可能になった。「社会福祉協議会の理想は、対象者としっかり連絡を取り、フォローアップができる状態を保つこと。マンパワーに限界がある中で、システムによる定期的な連絡で、人手をかけずにフォローアップの形を作れる」と小山氏は説明する。
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