「イオンでウォーキングする」文化は流行るのか? 実際に体験して「厳しそう」だと感じたワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月29日 8時5分
●日本でモール・ウォーキングが厳しそうな理由
それに比べると、日本の場合はまだまだ外でのウォーキング文化が根強い。治安などの切迫した問題もなく、モール・ウォーキングが国や地方をあげた動きになっていない。あるとすれば酷暑による影響だろうが、とはいえそれも夏だけの話である。
そうなると、消費者にとっては「『街歩き』と『モール・ウォーキング』のどちらを選びますか」という話になる。イオンモールの場合、どのモールでも入っているテナントが基本的に似ているため、消費者が「歩いていてすごく楽しいかといわれれば、そこまで……」となってしまうだろう。
さらに、行政が強く関与しない一企業だけでの取り組みになると、どうしても店舗ごとの差が出てきてしまう。例えば、イオンモール高松(高松市)ではスタートとゴール地点のプレートが他のポスターに囲まれて見えなかった。一店舗での些細(ささい)な出来事にすぎないかもしれないが、日本でモール・ウォーキングへの足並みをそろえるのが難しいことを表しているのではないだろうか。
実際、イオン以外にもららぽーとなどがモール内でのウォーキングイベントを開催していたが、最近ではその話もあまり聞かない。イオンモールウォーキングはアプリ連動などの仕組みが整備されているからまだ続いているのだろうが、今後も継続するかとなると先が見えない状況だ。
●「意識高い系」政策よりも、明確なメリットを
もし、イオンが本気でウォーキングプログラムを活性化させたいのであれば、消費者側か企業側か、どちらかに明確なメリットがないと厳しいだろう。例えば、「イオンモールウォーキングを取り入れたら明確に売り上げが上がる」ということを各店舗に示したり、消費者が「絶対にイオンでウォーキングをしたい」と思う仕組みを強化したりする必要がある。
近年、企業各社はESGやウェルビーイングなど「利益偏重」ではない、多角的な視点に基づいた経営を模索している。しかし、残念なことにこうした「意識高い系」の施策は、それを第一目標にしてもなかなか成果が出づらい。なぜなら、そうした意識高い系の目標よりも、確実なメリットがある方が人は動くからだ。CSRといった言葉で施策を曖昧にするのではなく、企業側や消費者側にとってメリットがある取り組みを進めていかなければ、イオンモールウォーキングのような意識高い系の施策は続かないのではないか。
著者プロフィール
谷頭和希(たにがしら かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
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