1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

新幹線が止まったらどうなる? JR東海の事故対応を取材してきた

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月14日 9時16分

 脱線防止ガードをトンネル手前に優先設置する理由は、列車がトンネルで脱線すると、トンネルの壁に車両が接触して大事故になるからだ。「三主桁」は複線線路が走る鉄橋のうち線路上に主桁が3つあるタイプで、これも脱線時には大きな障害になる。

 訓練作業は、作業員が電動カートに乗って現場に駆けつけ、指令所と連絡を取りながら脱線防止ガードやレール、車輪を目視で点検していく。一つ一つ指さし確認し、少し移動してまた点検の繰り返し。訓練は列車の片側のみ行ったけれども、実際は全長400メートルの列車の両側を点検していく。とても時間のかかる作業だ。万が一、事故でこの作業に出会ってしまったとしても、慌てずに落ち着いて点検終了を待ちたいと思った。

架線断線発生時の復旧訓練(今年初)

 飛来物が接触するなどの原因で架線が切れた。この切れた部分を仮架線で接続して応急的に復旧する。

 架線は新幹線車両に電力を供給する経路だ。切れると送電されないため列車が走行できない。また高電圧のため、切れて下がった電線によって感電、発火の恐れもある。架線が切れる主な原因は架線の腐食、たるみによるパンタグラフとの接触などがある。架線の腐食は飛来物の接触で急速に進む場合もあるし、たるみは気温などに応じて張力を維持する装置の故障で起きる。2022年12月18日に豊橋~三河安城間で起きた架線切断もたるみによるものだった。

 架線は張力を維持するために一定の区間で区切られ、各区間は1本の線でつくられている。架線が切れた場合は、その区間の架線を丸ごと交換する必要があり、復旧に時間がかかる。そこで、取りあえず短い架線を継ぎ足して仮復旧する。

 訓練では数人1チームの復旧部隊が現地を訪れ、司令部と連絡を取りつつ作業していく。この区間を停電し、切れた架線の端同士をひもで結んで地上から引っ張って持ち上げる。その後、架線にはしごを掛けて上り、仮架線で切れた端同士を結んでいく。もちろん架線に命綱をつなぎ、位置を変えるたびに命綱を付け替える。まるでとび職が高層ビルで作業をしているようだった。仮復旧までの作業時間は約50分だった。

 架線作業といえば、JR西日本が導入したロボット型作業車「零式人機」が思い浮かぶ。危険な作業であるし、ロボットに置き換えたいところだけれど、実際に作業を見ると、架線の結びなど手先を使った作業が多く、ロボットのアームでは難しいと思った。職人技ならではのスピードだったと思う。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください