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「千葉県版 時刻表」なぜ登場? 編集長が動かされた“いくつかの理由”

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月15日 6時10分

 と、ここで気になることがひとつ。売り上げとコストである。先ほど紹介したように、鉄道の時刻表はスマホを使えば、簡単に調べられる。スピンアウトの千葉県版を出したものの、売れなかったら損失を抱えることになる。こうした懸念に対し、梶原編集長はどのような手を打ったのか。

 ECサイトで、プリントオンデマンドでの販売である。注文があれば印刷するという流れなので、基本的に在庫を抱えることはない。とはいえ、できればリアルの書店でも扱ってもらいたい。編集長自ら営業に回って、なんとか2店舗で置いてもらった。東京の神保町と秋葉原で販売することになったが、千葉県の書店では「残念ながら置いてもらえなかった」(梶原編集長)という。

 千葉県に絞った時刻表は珍しいので、ファンの間で話題に。書店での販売は返本のリスクを抱えていたものの、想定の3倍ほどの注文が入った。

●飛行機の時刻表も登場

 スピンアウトの雑誌は、もう1つある。飛行機のダイヤに特化した時刻表(月刊)を刊行したのだ。『国内航空ダイヤ』と『国際航空ダイヤ』の価格は605円、『国内・国際航空ダイヤ』は990円

 ページをめくると、飛行機の時刻表だけでなく、さまざまな情報が載っている。例えば、『国内航空ダイヤ』には空港と各地を結ぶバスやタクシーの情報、航空各社の運賃(通常期・多客期それぞれの目安)などを掲載。

 『国際航空ダイヤ』では、航空会社コード(2レター)と都市空港コード(3レター)を掲載しているほか、ダイヤは時差(サマータイムを含む)やコードシェア、経由地(経由便の場合)にも対応した。

 それにしても、なぜこのタイミングで紙の雑誌なのか。実は、かつてJTBのグループ会社が『JTB国際線時刻表』を発行していて、ページの編集作業はJTBパブリッシングが手掛けていた。ただ、こちらもスマホの影響などを受け、2021年3月号で休刊した。

 このような背景があると、ますます「紙の時代ではないよね。なぜ復活させたの?」と思ってしまうわけだが、大きなきっかけのひとつに航空会社の撤退がある。以前、多くの航空会社は冊子の時刻表を無料で配っていたが、現在は発行していない。「であれば、紙の時刻表を復活させてもいいのでは」(梶原編集長)と考え、月刊誌として再登板させたのだ。

 鉄道の千葉県版と違って、こちらはECサイトでの販売のみ。つまり、返本のリスクはゼロ。また、鉄道の時刻表に掲載されている情報を、いわば「抜粋」した形になるので、編集コストも最小限に抑えた。目標部数は、赤字にならないこと。「とりあえず、損益分岐点を超えるまで売っていこう!」というミニマムな方針を掲げたところ、結果はどうだったのか。赤字を出さないために必要な部数の200倍も売れたのだ。ちなみに、Amazonの書籍「売れ筋ランキング」で、10位にランクイン(10月23日時点)した。

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