吉野家はなぜ、「カレー」と「から揚げ」の専門店を始めるのか?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月20日 8時10分
吉野家HDは3業態を立て続けに展開した
吉野家ホールディングスは、12月に新業態であるカレー専門店「もう~とりこ」と、から揚げ専門店「でいから」をオープンした。これは2023年2月に開業したカルビ丼とスンドゥブの専門店「かるびのとりこ」に続く新業態の店舗である。
カレー専門店は、吉野家が強みとする牛肉を活用した独自メニューを展開し、香り高いスパイスや特製ソースによる風味豊かな一皿を提供する見込みである。
また、から揚げ専門店では、外はカリッと中はジューシーな鶏肉のうま味を引き出したメニューを取りそろえ、家庭では味わえない専門店クオリティーで顧客をひきつける意図がある。
いずれの店舗もテークアウトやデリバリー対応に力を入れ、現代の消費行動の変化に柔軟に応える姿勢を打ち出している。
牛丼一筋のイメージが強い吉野家HDは、なぜ新業態に進出したのか。そこに隠された意図や戦略を読み解いてみたい。
●「問題児」を「花形」へ
まず、吉野家HDの戦略を、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の観点から分析してみたい。PPMとは、企業が展開する複数の製品・事業の組み合わせと位置付けを分析し、全社レベルで最適な経営資源配分を判断する経営手法である。
PPMは、「花形(製品)」「問題児」「金のなる木」「負け犬」の4つに分けられる。
吉野家HDの主力である牛丼チェーン店は、安定したキャッシュフローを生み出し、新規事業への投資資金を提供する「金のなる木」である。
しかし、「金のなる木」だけに依存するのはリスクが伴う。競合との価格競争や消費者の嗜好変化の影響を受けやすく、将来的な成長が見込めない可能性があるためだ。
そこで吉野家HDが開始したのが、「問題児」の位置付けとなる新業態のカレー専門店とから揚げ専門店だ。市場の成長性が高く、将来的な収益源となる可能性を秘める「問題児」に積極投資することで、「花形」へと成長させる戦略を採っている。
こうした新業態への投資は、企業の成長戦略を対外的に示す上でも重要な役割を果たす。
もし「金のなる木」が生み出した資金を新規投資に回さず、内部留保として蓄積すれば、投資家から「配当を増やせ」と要求される可能性がある。それに加え、投資家から企業の成長性に対する姿勢に疑問を持たれるリスクもある。
「問題児」への投資は、投資家に「将来成長するかもしれない」と期待してもらう意味でも有効だ。
●バリューチェーンの共有で効率よく成長
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