とにかく服のシミが取れる「スポッとる」が累計80万個以上のヒット 小売店から門前払い、「3000個の全返品」乗り越えた過去
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月4日 8時10分
ハッシュ 浅川ふみ社長
クリーニング店での衣類の染み抜きは、高度な技術と経験を要する職人技ともいえる。洋服の素材や染みの種類によって適切な薬剤や処理方法が異なり、一歩間違えれば取り返しのつかない失敗にもなりかねない。
そんな難しい染み抜きを、一般家庭でも安全に行える商品として注目を集めているのが「スポッとる」だ。テレビ朝日「激レアさんを連れてきた。」でも紹介された影響もあり、2024年12月現在の累計販売個数は80万個を突破。開発者であるハッシュ(東京都大田区)代表取締役社長の浅川ふみ氏に、商品開発から販売までの道のりを聞いた。
●「胃液のように」服を溶かさず、汚れだけを分解できないか?
「このシミは落ちないよ」。クリーニング店に持ち帰った衣類を見た店主から、そう言われる日々が続いた。
当時、家業であるクリーニング店で働き始めた浅川氏は、シミ抜きの知識がないまま、集配の仕事を任されていた。客からシミ抜きを頼まれて預かり、店に戻って「これは無理」と言われ謝罪に行く。
「お客さまから『シミが落ちないなら出さなかった』と言われ、簡単に引き受けてきた自分が悪かったと反省する日々でした」と浅川氏。そして、自分でシミ抜きに挑戦することを決意する。
素人同然で失敗を重ねながらも、諦めずに研究を続けた。強力な液体は生地を痛めてしまう。だが反対に弱いとシミ抜きができない。そんなジレンマと試行錯誤の中で、ふと気付いた。「私たちが食事をする際、胃液は身体や臓器を溶かさず、食べ物だけを消化する。そんな『胃液』のようなシミ抜き剤がつくれないだろうか」。そしてたどり着いたのが「消化酵素」だった。
そして、酵素による加水分解と、乾燥を繰り返すことで、衣類の繊維を傷めることなく汚れを細かく分解する液体の開発に成功。この液体を用いたシミ抜きの評判は次第に高まっていった。
そのうち「どうやってシミ抜きしているのか?」と興味を持たれることが増えてきた際、「この液体を瓶に詰めて、説明書をつければ誰でもできるのでは」と考えた。これがスポッとる誕生の原点である。
●「門前払い」から始まった販売
店を構えていれば客が来てくれるクリーニング店とは違い、新しい商品は自分から働きかけなければ売れるわけもない。だが最初に足を運んだ大手量販店では、あっさりと断られた。「そういった商品は他にもあるから」と当時の担当者は一蹴。どこの誰だか分からない人が、突然持ち込んだ商品に興味を示すはずもなかった。
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