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熊本の廃校が「世界最先端のビジネススクール」に 異色スタートアップの、故郷への思いと緻密な戦略

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月5日 8時10分

 宿泊を伴う利用は年間2000人を見込み、週末の予約は2025年2、3月までほぼ埋まっている状態だ。サッカーのユースクラブチームの合宿や、企業の異業種交流会、全国各地から集まる農業関係者の交流会など、当初想定していなかった使われ方もされているようだ。

 この多様な利用形態は、YAMAGA BASEが掲げる「iReaction」という理念に通じる。Innovation(革新)、Recreation(余暇)、Education(教育)、Association(協働)、Communication(交流)の頭文字を組み合わせたこの造語には、「刺激を受けて変化する」という意味も込められている。

 実際、byコミュニティーでの知見共有、農業振興の取り組み、中高生の職場体験、企業間交流会など、理念に沿った活動は多岐にわたる。派遣される運営側のスタッフも、臨床検査技師や高校教師、元警察官など多様なバックグラウンドを持つ20~30代の若者が移住して加わり、理念を体現している。「この場所から新しい価値が生まれていくのを実感している」と中原氏は語る

●想定外の展開が導く新たな可能性

 「当初から、この場所は“私たちが何かをする”というよりも、“みんながチャレンジできる場所”として機能することを目指してきた」と中原氏は語る。実際、施設のオープン以降、想定外の利用提案が次々と持ち込まれている。

 例えば、移住者が地域の事業者12社と連携したクリスマスマルシェの企画や、山の保全と屋内緑化を組み合わせた新しい取り組みを検討する事業者の出現。「自分たちで考えもしなかったアイデアが、利用者から次々と生まれている」(中原氏)。

 これはハーバードビジネススクールで学んだ「意図的戦略と偶発的戦略」という考え方とも通じる。「最初から描いた戦略がうまくいった会社は、最終的に成功した企業の中のわずか7%しかない。むしろ予期せぬ出来事から生まれる可能性を重視することが重要」と中原氏は説明する。

 当初は地域貢献や農業関連の事業を主軸に考えていた中原氏だが、現在では国内外からの多様な利用者が集まり、予想以上の広がりを見せている。例えば、インターナショナルスクールに通う外国人家族との交流も自然に生まれ、70人規模のハロウィーンパーティーを開催するなど、新たなコミュニティーが形成されつつある。

 YAMAGA BASEは、熊本県の産業発展を象徴する半導体大手TSMCの工場からも車で40分という立地であり、今後の可能性をさらに広がりそうだ。「YAMAGA BASEから、地域に限らず日本や世界に向けたさまざまな挑戦が生まれていってほしい」。中原氏の目指す“イノベーション・ハブ”の取り組みは、まだ始まったばかりである。

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