3万円払っても欲しい? ATMでは使えないのに人気沸騰のメタルカード
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月14日 10時42分
●非接触の世界におけるメタルの意味
10月の発行開始以来、SNSでは「待ってました」という声が相次いだ。JCBは積極的な告知を控えめにしているものの、発行直後から想定を上回る申し込みが続いているという。
「対面での決済、特に高額な買い物の際にメタルカードを使う頻度が増えたとの声を多くいただいています」と司茂氏は手応えを語る。
利用実態からも、店頭での対面決済でメタルカードを積極的に使用する傾向が見えてきた。金属製カードの発行には手作業での封入など手間のかかる工程が必要で、申し込みから届くまでには2~3週間を要する。それでも多くの会員が「重厚感のある非日常的な体験」を求めて申し込みを決めているという。
JCBはメタルカード発行と並行して、プレミアム会員向けの新サービスも充実させる。2025年春には予約困難な飲食店の予約サービス「JCBスター・ダイニング by OMAKASE」を開始。約1000店舗の厳選された飲食店から、条件に合う店舗を簡単に検索・予約できる。「ザ・クラス」会員には、優先予約枠の提供など独自の特典も用意する。
このように人気のメタルカードだが、皮肉なことに今はカードを手渡す機会が激減している。コロナ禍での接触回避やスキミング防止の観点から、店員がカードに触れることはめっきり減った。タッチ決済の普及で、カードを財布から出すことすら少なくなった。スマートフォンに紐(ひも)付ければ、それが無料カードなのかハイステータスカードなのかも分からない。
筆者も某社のメタルカードを所持しているが、端末によって使えるか注意が必要な上、重さゆえに持ち歩きには不便だ。人前で使っても特段の反応はなく、結局は自己満足の範疇(はんちゅう)を出ない。
それでも不思議なことに、金属製カードへの人気は高まる一方だ。デジタル化が進み、カード決済の非接触化が当たり前になった今だからこそ、「自分へのご褒美」として物理的な価値が見直されているのかもしれない。
株式投資や銀行預金は目に見えないものだが、カードは手に取って触れる数少ない金融商品だ。デジタル化が進む金融の世界で、質量を持つ「特別なカード」は、新たな価値を見出されつつある。
(斎藤健二、金融・Fintechジャーナリスト)
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