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「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月16日 6時10分

 ANAは、旅客輸送ではなく貨物輸送に重点を置き、収益率の向上を図りました。この戦略は財務諸表にも現れています。ANAの2021年4~6月期の貨物事業の売上高は、前年同期比2.5倍弱の735億円であるのに対し、JALは同約1.8倍の476億円。

 当時、JALは貨物専用機のチャーターサービスしかなかった一方で、ANAは貨物専用機を保有していたことも理由として挙げられます。ただ、この貨物事業の売り上げの伸び率の違いには、機材繰りの巧みさが現れたとも考えられます。

 ANAはコロナ禍において、客単価を上げながら、できる限り貨物で稼ぐという戦略をとっていました。当時旺盛だった国際貨物の需要をとるため、貨物専用便を多く飛ばすのはもちろん、沖縄にあった貨物専用機を全て成田に集めて運航することで、貨物による売り上げを大きく伸ばしました。

 また、激減した旅客需要に合わせ、座席供給量を落として需給ギャップを埋めるとともに、国際線で使用する旅客機を国内線に回しました。そして、ビジネスクラスのような上位クラスの座席を活用して、可能な限り高い価格で販売し、客単価を上げる戦略をとりました。

 一方、JALは国の観光需要喚起政策「Go To トラベル」に注力し、旅客数を回復させることに成功しています。これは2023年3月期の座席キロの回復ぶりからも見て取れます。

 しかし、「Go To トラベル」のようなパッケージ商品のデメリットは客単価が低いこと。その結果、旅客数の回復には成功したものの、利益率の回復ペースは緩やかでした。

 両者の戦略は、どちらも業績回復に対して良い影響を与えました。しかし、利益率という観点で見ると、ANAのほうがJALを上回る回復を見せました。

●追い風は長く続かない

 業績を急激に回復させたJALとANAの両者。とはいえ、このまま景気の良い状況が続くのかというと、実は雲行きは怪しいと考えています。

 ANAは2024年3月期決算発表の際、ロシアのウクライナ侵攻の長期化の影響による燃油費の高騰や、人件費の増加など、さまざまな下押し圧力があると述べました。それに加え、航空燃料費の補助金が2024年4月末で終わったこと、航空使用料の減免も2024年3月以降縮小したことも影響しうるとコメントしています。こうした状況を受け、ANAは2025年3月期の営業利益を250億円押し下げると見込んでいます。

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