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「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月16日 6時10分

 また、インバウンド需要の急速な回復で、日本観光の盛り上がりが大きく報じられることが多々ありますが、実はANAの国際線の座席キロ数は、コロナ前の水準には戻りきっていません。ANAはコロナ前と比べると、北米路線は90%、アジア・オセアニア路線は80%ですが、中国や欧州は60%ほどしか戻っていません。

 この状況は、当然ながらJALもほぼ同じです。座席キロ数は北米路線こそコロナ前以上の水準となっていますが、ハワイ・グアム線は60%ほど、中国線も70%ほどしか回復しておらず、全体としてはコロナ前の80%台の水準となっています。

 2024年12月、岩屋毅外相は、中国の富裕層向けに10年間有効な観光ビザを新設し、団体旅行用のビザの滞在可能日数を30日に延長することを発表しました。ですが、中国の景気自体が芳しくないため、大きな需要回復要素とはなりえない可能性もあります。

 こうした観光需要は景気に敏感なため、欧州や米国の景気が悪化したり、円高に振れたりした場合、訪日観光客が減る可能性があります。

 また、ドル箱だったビジネス需要も、コロナ禍でのオンライン会議の定着により、戻りきらないことが予想されます。実際、2024年3月期決算で、ANAはコロナ前の約7割で推移すると述べており、JALも出張需要は同6割を超えるくらいのレベル感であると発表しました。

 こうした背景もあり、これまでの「追い風」状態は長く続かず、むしろ「向かい風」になることすら考えられます。

●そもそもコロナ禍の大打撃の穴埋めはできていない

 特にANAについては、「過去最高益」とセンセーショナルに報道され、インバウンド需要の回復もあって航空業界全体が順風満帆化のように感じられます。実際、業績は徐々に回復してはいるものの、そもそもコロナ禍の大打撃の穴埋めをするにはほど遠い状況です。

 例えば、ANAに関しては、コロナ前の2020年3月期の自己資本比率は41.4%でしたが、コロナ禍で長期の借り入れを行った影響もあり、2022年3月期には24.8%と、ほぼ半減しています。過去最高益となった2024年3月期ですら29.3%と、コロナ前の水準には戻っておらず、財務的に余裕があるとはいえない状況です。

 また、JALにおいても、コロナ前の2020年3月期の自己資本比率は45.0%でしたが、コロナ禍で長期の借り入れの影響で2022年3月期には32.4%に。大幅な増収増益を達成した2024年3月期でも34.3%と、コロナ前と比較すると10ポイント以上マイナスです。

 先ほどのような「追い風」が吹かなくなることを考えると、両者の経営はこれからが正念場といっても過言ではないでしょう。

 一度破綻を経験して筋肉質な経営になっているJALと、「選択と集中」が得意で厳しい環境下でも経営できてきたANA。これからの環境の変化に両者がどのように対応し、コロナ禍の穴埋めをしていくのか。今後の経営力に注目したいと思います。

(カタリスト投資顧問株式会社 取締役共同社長、草刈 貴弘)

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