ベビー服から始まった在庫管理SaaS、3年間で顧客の流通総額は2兆円弱 大阪発の「フルカイテン」とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月22日 6時15分
フルカイテンの田中CPOへインタビューを実施した
物流コストが高まり、在庫の適切な管理が求められる中、B2Bの在庫分析SaaS「FULL KAITEN」を提供しているのがフルカイテン(大阪市)だ。2023年にベンチャーキャピタルのジャフコ グループから出資を受けるなど、注目が集まっている。今回はフルカイテンの田中大介氏(執行役員CPO)へのインタビューを通し、同社の戦略などを聞いた。
●勘に頼らない在庫の管理を実現する
フルカイテンの前身は、2012年に始めたベビー服のEC事業だ。在庫管理が原因で三度の倒産危機を経験する中で、創業者・社長の瀬川直寛氏がFULL KAITENの原型を思い立ったという。その後事業化を果たし、ベビー服事業を売却した上で現在はSaaS事業に専念している。
FULL KAITENは「売価変更」「店間移動」など5種類のラインアップを展開しており、いずれも小売店の売り上げと在庫データをAIで分析し、在庫を効率化するもの。田中氏は次のように説明する。
「特にユーザー数が多い機能は『売価変更』です。過剰な在庫を解決する上では在庫消化率を上げる必要がありますが、この機能では値下げ率ごとの消化日数をシミュレーションし、的確な売価を示せます」
例えば「10%値下げした場合の消化日数はn日、20%値下げするとm日」といった形で、値下げ率ごとの消化日数を把握できる。値下げ率の設定は属人化している企業が多く、ロスが大きい分野であり、人気の高さもうなずける。
その他、近年ユーザー数の伸び率が大きい機能が「店間移動」だという。店舗ごとの在庫を平準化する機能だ。
「チェーン店では、店舗によって欠品や過剰在庫が発生するなど、同じ商品であっても売れ行きがばらつきがちです。『店間移動』機能を使えば、チェーンの中でどの商品をどう動かせば良いかが分かりやすくなります」(田中氏)
値下げの判断や在庫の移動は、人の勘に頼るよりもAIに任せた方が良いのは明らかだ。こうした背景から、イオングループのような大手チェーンでは、AIを使った価格判断システムをIT企業と共同開発している。一方、中堅以下の企業規模では、独自開発に割けるリソースは限られる。FULL KAITENは、こうした企業からのニーズを取り込むサービスといえるだろう。
フルカイテンでは、年商30億円以上の事業者をターゲットにしており、現在は約200ブランドが導入している。主軸はアパレル業界だ。ARPA(1アカウント当たりの平均売り上げ)は月額50万円以上。2022~24年の3年間でFULL KAITENが扱った顧客の流通総額は2兆円弱に及ぶ。
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