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サントリーの「割って飲む」ドリンクが好調 「売れるのか?」と悩む上司を「タコパ」で説得

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月30日 8時0分

 宮内氏がおうちドリンクバー商品化のアイデアを出したところ、上司を含め社内からは反対の声が大きかったという。当時、サントリーには「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」や「割るだけBOSS CAFE」といった、濃縮タイプのお茶やコーヒーが存在していた。にもかかわらず、なぜ反対されたのだろうか。理由は「手間」にあった。

 コーヒーやお茶の場合、飲むためには豆をひいたり、お湯を沸かして茶葉を入れたりという手間がかかる。濃縮タイプの商品はこうした手間を省く利点があった。しかし、おうちドリンクバーはその逆で、わざわざ炭酸水で割るという手間が発生する。すでに完成された炭酸飲料が売られている中で、飲むまでにひと手間かかるおうちドリンクバーは何がウリになるのか。上司からそう尋ねられたという。

 そこで宮内氏が例に出したのが「タコパ」、つまりたこ焼きパーティーだ。味のことを考えれば、専門店の商品を買う方がいい。しかし、家族や友人が集まってたこ焼き器を囲み、ワイワイしながら作ることは楽しい。「タコパを例に出し、おうちドリンクバーは『非合理的だけど情緒的』であるという点がウリであると何度も説明し、社内を説得しました」(宮内氏)

●100パターン近くのレシピを試飲

 開発の過程で最も苦労したのが、中味の設計だ。完成品として売られている炭酸飲料と、おうちドリンクバーは微妙にレシピが違うのだという。

 会社としては、飲む際におうちドリンクバー1:炭酸水4で割ることを推奨している。しかし、「甘いものが苦手だからかなり薄めに」「お風呂上りに飲みたいからさっぱり薄めに」「今日は疲れているから濃いめに」など、気分やシーンに合わせて飲みたい濃さは変わってしまう。「おうちドリンクバーに求められたのは、『濃い』『薄い』といった差があっても、例えばC.C.レモンの味の幅に収まるようにすることでした」(宮内氏)。

 また、炭酸水だけでなく、コーラや果汁飲料、牛乳などの飲み物で割ることが想定された。そこで、試作時には、さまざまな割材を用意し、とにかく割って飲んでを繰り返したという。

 開発当時、フレーバー候補は4種類あり、割る時の割合も1:4、1:3、1:6など複数を試す必要があった。割材は12パターン用意し、合計100回ほど味見した。レシピの設計には半年以上かけたという。

●若年層にもウケたおうちドリンクバー

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