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“勝ち組”日立は生成AIを「本当に」活用できるか? 社長のIR向け発言から考察

ITmedia エンタープライズ / 2024年6月17日 15時0分

 短期的なインパクトがもたらす事業機会としては、ソフトウェア開発におけるエンジニア不足解消に向けた「ソフトウェア生産性向上効果の刈り取り」、生成AIの需要増大に伴う「データセンター需要急拡大への対応」、そして「AI用半導体の供給不足への対応」の3つを挙げた。図3の下段に記されているのは、それぞれの事業機会に向けて日立がグループとして保有している技術やサービスだ。

 中長期的なインパクトがもたらす事業機会としては、「深刻化する電力不足への対応」「フロントラインワーカーの生産性向上の実現」「AI利用に伴う多様なリスク発現への対応」の3つを挙げた(図4)。図4の下段には、それぞれの事業機会に向けた日立の技術やサービスが記載されている。

●なぜ日立はIR向けに「生成AI事業」を丁寧に説明したのか?

 「これまで説明してきたように、生成AIは短期的にも中長期的にも日立に大きな事業機会をもたらすと確信している。そして、生成AIの出現を機に考えたのは、今後も生成AIのような大きな転換点となる技術が出現し、さまざまな社会課題の解決手段になるとともに、また新たな社会課題をもたらすことになるということだ」

 こう話した小島氏は、そうした変化への対応について次のように述べた(図5)。

 「転換点となる技術が出現すれば、そのインパクトを事業機会として成長する。そして、次の転換点を生む技術を見極めて積極的に投資し、技術力の向上と事業ポートフォリオを整備、拡充する。こうしたサイクルをしっかりと回すことで、大きな転換点を成長につなげて企業価値を向上させていく。大きな転換点がもたらす社会課題に素早く対応する力を磨いていく。日立はこうありたいと考えている」

 では、次の転換点を生む技術をどのように見極めるのか。

 「その見極めにも生成AIが寄与する。なぜならば、生成AIは研究の生産性を大きく向上させるポテンシャルがあるからだ。生成AIを研究に活用することで、量子計算や抗老化、核融合といった商用化にはまだ時間がかかると見られている領域における次の転換点も想定より早まる可能性がある。そうした見極めを的確にするためにもオープンイノベーションやコーポレートベンチャリング、バックキャスト型R&Dといった活動が重要だ」(小島氏)(図6)

 以上が、小島氏の生成AIがもたらす事業機会に関するスピーチのエッセンスだ。

 もちろん、同氏が話したのはあくまでも日立の考え方であり、取り組みだが、短期的なインパクトがもたらす事業機会(図3)における「ソフトウェア生産性向上効果の刈り取り」や、中長期的なインパクトがもたらす事業機会(図4)における「フロントラインワーカーの生産性向上の実現」「AI利用に伴う多様なリスク発現への対応」といった点は、他のITベンダー、さらには社内外に向けてDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるさまざまな業種の企業にも当てはまる話だろう。

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