イオングループの「データの生かし方」「生成AIの使い方」とは? 外部人材登用の理由を考察
ITmedia エンタープライズ / 2024年7月2日 7時0分
DICが取り組んでいることは大きく3つある。
1. アナリティクスの内製化: Azure OpenAI Serviceをベースに自分たちが必要なデータ分析ツールを全て内製化している。中山氏によると、「内製化することで、スピード、品質、コスト、技術蓄積といった面でメリットがある」。この内製化へのこだわりが、DICの真骨頂といえそうだ
2. ベストプラクティスの展開: グループ横断でのデータ活用によるベストプラクティスの展開に注力している
3. 新しい事業機会の探索: 例えば、医療データの活用がこの一つだ。イオンと医療データは一見、結び付かないように思えるが、同グループにはおよそ56万人の従業員がいることから、健康保険組合で管理している従業員のデータを分析すれば、ヘルスケア分野での事業機会を探ることができる。DICでは生成AIも新たな事業機会を獲得するツールとして位置付けている
●イオンはなぜ、外部人材を登用してDICを発足させたのか
中山氏は、生成AIの活用事例として「商品説明自動生成AI」と「イオン景気インデックス」といった2つの取り組みを紹介した。
商品説明自動生成AIは、主にEコマースでの商品説明の質的向上を目的としている。取り組みの背景について同氏は、「商品説明を精緻化することはEコマースの強化にとって必要不可欠だ。だが、リソースが限られており、全てのコンテンツを手動で作成するのは現実的ではない。さらに、一貫性のある高品質なコンテンツを維持するのは極めて困難だ」と説明した。
この取り組みによる効果として、同氏は「従業員作業効率向上」と「品質および顧客体験改善」を挙げた。従業員作業効率向上については、コンテンツ生成を自動化することにより、作業負荷およびコストを削減し、「生成AI導入後、セールスコピー検討時間工数を60%削減した」(中山氏)という(図3)。
また、品質および顧客体験改善については、コンテンツの品質改善によりページビュー(PV)の増加と顧客体験の向上を実現した。図4の下段のグラフは、PV数増加の効果をPoC(実証実験)で検証した結果だとしている。
一方、イオン景気インデックスは、グループ全体の売上実績データと日常の買い物の第一線に立つ店長たちの気付きを照らし合わせて地域別および業態別の景気動向を「見える化」するのが目的だ。この取り組みの背景について中山氏は、「既存の景気指標はタイムラグがあり、現場業務に生かしにくい。また、消費者の生活実感と乖離(かいり)しているとの声もあるなど、実用化に向けた課題があった。こうした中で、タイムリーに日々の景況感を分かりやすく反映することが求められている」と説明した。
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