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イオングループの「データの生かし方」「生成AIの使い方」とは? 外部人材登用の理由を考察

ITmedia エンタープライズ / 2024年7月2日 7時0分

 具体的には、店長アンケートやPOSデータ解析を行い、その内容を生成AIで要約した情報を素早く作成して提供することにより、顧客ニーズへの迅速な対応、顧客体験のさらなる向上、さらには地域経済の活性化に貢献する考えだ(図5)。

 今回のイオングループの話で筆者が最も注目したのは、販売や顧客のデータ活用に早くから着手している流通小売業の代表的な存在であるイオングループが、DXに向けてデータドリブン経営を推進するためにデータを活用する専門組織を設けたことだ。しかもそれが3年前で、中山氏をはじめ専門組織のメンバーもほぼ外部からの採用となれば、社内とはいえ既存の事業会社などとの良好な関係作りに苦労してきたのではないか。筆者はDXの取材でそんな例を数多く見てきた。会見の質疑応答でその点について聞くと、中山氏は次のように答えた。

 「ご推察の通り、当初は関係作りに苦労したが、グループとしてデータドリブン経営を推進するという方向性を経営トップが明確に示したので、事業会社もDXへの方向性は認識していた。ただ、現場が忙しいこともあって当初は事業会社に軽くあしらわれるケースが少なくなかった。それでも的確なデータ分析や生成AIをこんなふうに使えば、業務の生産性向上や新しい事業機会につながると提案し、実際に成果を上げることで少しずつDICの評判が高まってきたと感じている。最近では事業会社から、こんな新しいことができないかといった相談も増えてきており、DICの役割の重要性を実感している」

 非常に興味深いコメントだ。中山氏は「当初は関係作りに苦労した」ことを率直に認めた。一方で、グループ全体への経営トップの明確な指示があったことや、DICが事業会社に提案型アプローチで関係作りを図ってきたことが見て取れる。

 つまり、DICはこれからイオングループが目指すべきデータドリブン経営の起点であり、今後は司令塔とプラットフォームを担う存在になり得る。まずはそうした方向性をグループ全体に知らしめる。それがDICを発足させた経営トップの狙いだと筆者はみた。

 さらにいえば、今回はIT部門との関係性やDXの推進役をどこが担うのかについて聞けなかったが、おそらくDICはグループの全てのデータを一元管理・活用する役割に徹し、基幹をはじめとした業務システムに関してはIT部門、DXの実践については基本的に現場主導で、それぞれが棲み分けているのではないかと推察する。その全貌について、改めて話を聞く機会を得たい。

○著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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