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生成AI活用の「現在地」は? 総務省の「2024年版 情報通信白書」から考察

ITmedia エンタープライズ / 2024年7月16日 17時0分

 図4は、業務における生成AIの活用状況を示したグラフだ。企業を対象としたアンケート調査で生成AIの活用が想定される業務ごとに活用状況を尋ねた設問に対し、「電子メールや議事録、資料作成などの補助」に生成AIを使用していると回答した割合は、日本で46.8%(「業務で使用中」と回答した割合)であり、他国と比較すると低い。

 「トライアル中」までを含めると、米国やドイツ、中国の企業は90%程度が使用している。白書は、「海外では顧客対応などを含む多くの領域で積極的な活用が始まっている一方、日本企業は社内向け業務から慎重な導入が進められていることが分かった」としている。

 図4のグラフを見ると、業務における生成AIの活用においても日本が後れを取っているようだ。業務アプリケーションに生成AIが組み込まれた形で広く使われるようになるのはこれからなので、図2と同じくこちらもそれほど憂慮する必要はないと筆者は考えている。

●「生成AIは企業としての競争力」との認識を持て

 図5は、生成AIの課題を「従来型AIから存在するリスク」と「生成AIで特に顕在化したリスク」に分けて表記したものだ。元は、2024年4月に総務省と経済産業省が策定した「AI事業者ガイドライン」(第1.0版)だ。

 例えば、従来から存在するAIによるリスクとして「バイアスのある結果、および差別的な結果が出力されてしまう」「フィルターバブルおよびエコーチェンバー現象が生じてしまう」「データ汚染攻撃のリスク」「AIの利用拡大に伴う計算リソースの拡大によるエネルギー使用量及び環境負荷」などが挙げられている。

 「フィルターバブル」とは、アルゴリズムがインターネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析して学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たいと分析された情報が優先的に表示される。利用者の観点に合わないとアルゴリズムが判断した情報から隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」にそれぞれの利用者が孤立するという情報環境を指す。「エコーチェンバー」とは、同じ意見を持つ人々が集まり、自分たちの意見を強化し合うことで、自分の意見を間違いないものと信じ込み、多様な視点に触れられなくなる現象を指す。

 生成AIによって顕在化したリスクとしては、「ハルシネーション」が挙げられる。生成AIは事実に基づかない誤った情報をもっともらしく生成することがあり、これをハルシネーション(幻覚)と呼ぶ。技術的な対策が検討されているものの完全に抑制できるものではないため、生成AIを活用する際には、ハルシネーションが起こる可能性を念頭に置き、検索を併用するなど、ユーザーは生成AIの出力した答えが正しいかどうかを確認することが望ましい。

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