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生成AI活用の「現在地」は? 総務省の「2024年版 情報通信白書」から考察

ITmedia エンタープライズ / 2024年7月16日 17時0分

 さらに、生成AIの利用において、個人情報や機密情報がプロンプトとして入力され、そのAIからの出力などを通じて流出してしまうリスクや、ディープフェイクによる偽画像および動画といった偽・誤情報を鵜呑みにしてしまい、情報操作や世論工作に使われるといったリスクもある。既存の情報に基づいてAIにより生成された回答を鵜呑みにする状況が続くと、既存の情報に含まれる偏見を増幅し、不公平あるいは差別的な出力が継続し拡大する(バイアスを再生成する)リスクがあることなども指摘されている。

 白書によると、同ガイドラインはこのような「リスクの存在を理由として直ちにAIの開発や提供、利用を妨げるものではない」としている。その上で、「リスクを認識し、リスクの許容性および便益とのバランスを検討した上で、積極的にAIの開発や提供、利用を実施することを通じて、競争力の強化や価値の創出、ひいてはイノベーションにつなげることが期待される」としている。

 図6は、生成AI活用による効果と影響を示したグラフだ。約75%が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」(「そう思う」と「どちらかというとそう思う」の合計)と回答した。一方、「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが拡大すると思う」「著作権などの権利を侵害する可能性があると思う」と回答した企業も約7割あり、生成AIのリスクを懸念していることがうかがえた。

 図6のグラフの効果・影響項目において、特に強く意識したいのは「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる」「斬新なアイデア/新たなイノベーションが生まれる」「活用しないと企業としての競争力が失われる」の3つだ。とりわけ「生成AIは企業としての競争力」であることを、経営者をはじめ全従業員がしっかりと認識する必要があるだろう。

 加えてもう1つ、筆者が企業における生成AI活用事例の取材を通じて印象強く感じているのは、個人だけでなくチームとして生成AIを「使い倒す」ことだ。つまり、生成AIをチームの一員として捉え、チームのディスカッションに組み入れるのだ。そうすると、そのディスカッションを通じて生成AIはブラッシュアップされ、個人にとってもチームにとっても頼りになる仲間になっていくだろう。

 ただ、あくまでも意思決定は人間(チーム)が行うことを肝に銘じておかなければならない。

(注1)「令和6年(2024年)版 情報通信白書」

○著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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