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富士通とNECの最新受注状況から探る「今後の国内IT需要の行方とリスク」

ITmedia エンタープライズ / 2024年8月7日 7時0分

 「率直なところ、大きなリスクがあるとは見ていない。かつては利益率の低い案件への対処がリスクとなっていたが、それも2023年度に利益率の高い案件への受注シフトがだいぶ進んだ。さらに、プロジェクトごとに必要な人材をどう確保するかも懸念事項だったが、適切にマネジネントすることによって、今のところリスクとしては捉えていない」

 藤川氏のこの発言は、人材確保に向けた動きをリスクと見る磯部氏と逆の捉え方のようにも受け取れるが、注視しているポイントは同じだといえるだろう。

 最後に、デジタル人材の確保について、筆者が取材を通じて「企業としてここに注力すべき」と感じた2点を挙げておきたい。

 一つは、外部の優秀なデジタル人材を呼び込むために、自社の魅力を大いにアピールすることだ。上記のように、富士通やNECでさえデジタル人材の確保に注力している中にあって、「これからは業種にかかわらずデジタル企業に変化する必要がある」と言われても、そんなに簡単にデジタル人材は集まらない。社内でのリスキリングによる育成を進めることも大事だが、実践で通用する人材はすぐには育たない。

 そこで、激しい争奪戦を覚悟した上で、外部の優秀な人材を呼び込むために、「この会社をデジタルで変えてやろうという人、来たれ」くらいのメッセージを発信すべきだ。ただ、最も大事なのは「この会社が外部の人材にとってどこが魅力的なのか」を明示することだ。そこに確固たる自信を持ってアピールするものがなければ、優秀な人材など来るわけがない。これは、企業におけるこれまでのステータスとは関係ないと筆者は考える。今こそ、企業はそうした自らの存在意義をアピールするメッセージを大いに発信してもらいたい。

 もう一つは、全ての分野でAIによる自動化を進めることだ。デジタル人材を確保できないなら、AIにデジタル人材として働いてもらうしかない。分かりやすいのは、生成AIを使って生産性を大幅に向上させることができるソフトウェア開発の仕事だ。生成AIについては、コールセンターをはじめ、さまざまなところでこれまで人がやっていた仕事を代替できることが分かってきた。

 AIによる自動化については、富士通やNECなどのITサービス事業者の力を借りてもいいだろう。むしろ、一緒になって新たなデジタル事業を始めるつもりでやるべきだ。AIによる自動化は、うまくやれば人手をかけない「装置ビジネス」に仕立て上げることも可能だろう。そうしたアプローチも自らの魅力にすればいい。

 そう考えると、企業の魅力は探すものではなく、創るものかもしれない。

○著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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