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AppleのAI戦略発表はなぜ他社より大幅に遅れたのか 「Apple Intelligence」の真価を読み解く

ITmedia Mobile / 2024年7月19日 11時27分

5. 開発の柔軟性

他社製のLLMを使用すると、その技術の制約に縛られることがあります。自社開発であれば、Appleのニーズに合わせて柔軟に機能を追加したり、改良したりすることができます。これにより、Appleが独自のビジョンに沿った製品やサービスを提供しやすくなります。

6. 他社との競争

LLMの分野では、GoogleやOpenAIなどの他社が強力なプレイヤーとして存在します。Appleが他社製のLLMを採用すると、これらの競合他社に技術的な依存をすることになり、競争上の不利を招く可能性があります。自社開発を選択することで、独自の競争優位性を保つことができます。

これらの要因を考慮すると、Appleが他社製LLMを採用せず、自社開発に注力した理由が理解できます。プライバシー保護、カスタマイズの柔軟性、コスト効率、技術的優位性の確保など、Appleの長期的な戦略に基づいた決定と考えられます。

 いずれも納得のいく理由だ。単にフレームワークを作って選択可能にしたところで、プライバシー、セキュリティの問題は付きまとうし、デバイスやユーザーの行動から得られる情報をどのように他社のサーバに安全に渡すかというクリティカルな問題は発生する。

 仮に主要LLMの開発企業のどこかと長期的な提携をしたとしても、今後のコンピューティングにおける最もコアな部分をそこに牛耳られることになる。それは避けたいだろう。

 LLMは超強力なマシンを回しっぱなしにするわけだから、コストだけでなく、2030年までにカーボンニュートラル達成を目標としているAppleの姿勢とは相入れない部分もある。マザーネイチャーに怒られてしまいそうだ。

 WWDC24直前にはOpenAIまたはGoogleとの全面的な提携やがうわさされていたが、ふたを開けてみれば、自社製LLMをデバイスに密結合させ、自社製クラウドとも統合したApple Intelligenceの壮大な計画が明らかになった。

●Apple Intelligenceの真価はオンデバイスとクラウドのハイブリッド戦略にある

 ここで、Apple Intelligenceはどういうものかを振り返ってみよう。基調講演で概要を知ることはできるが、手っ取り早くその細部まで理解を深められる資料がある。それは、「Platforms State of the Union」だ。

 Platforms State of the Unionは、WWDC基調講演の後に開催されるイベントで、発表内容をデベロッパー向けにもっと詳しくまとめたもの。長年の参加者はこっちが本番とする人がほとんどだ。現在はリアルなイベントではなく1本のまとまったビデオとなっているが、個別のセッションよりも分かりやすく、担当者が入れ替わり立ち替わり説明してくれる。

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