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立ち上がる“スタートアップ特化の健康保険” 保険料率8.98%、設立の背景は

ITmedia NEWS / 2024年6月4日 10時45分

 若いスタートアップの加入を前提とし、保険料率も低いとなると、持続性には疑問が持たれる。VCスタートアップ健保では、電子申請の推進により業務効率化を図り、中長期的な財政健全化も目指すという。

 さらに被保険者である従業員とその家族の健康増進にも注力したいとして、データを活用し、スタートアップのニーズに合った健康増進につなげられるような「保健」事業も展開していく。

 保健事業については、3カ年で計画。初年度はまずデータを集める基盤を整え、2年目、3年目と健診受診率の向上や支援ニーズの明確化、個別支援強化や産業保健の支援を進めていくという。一方で、メンタルヘルスや女性の健康、若年層のがんや生活習慣病予防といった部分については、当初から健診への補助を手厚くする。

 吉澤氏は「“健康保険組合業界におけるスタートアップ”として新しいことにチャレンジし、他の健保組合にもインパクトを与えていきたい」と語る。

●新型コロナ職域接種で大企業との差を痛感、健保設立に動く

 VCスタートアップ健保設立のきっかけは、コロナ禍の頃にさかのぼる。当時、吉澤氏は独立系VC・Coral Capitalで投資を担当していたが、投資先から「スタートアップは職域接種を受けられないのか」と尋ねられた。そこで、別の投資先の医療系スタートアップでCOOを務めていた金谷義久氏に相談し、VC横断でスタートアップを集約。1100社、4万8000回の職域接種を実現した。

 「当初は1000人以上の従業員規模の大企業しか職域接種はできないという話もあった中、かなり早い段階で動き始め、中小企業の中ではおそらく最大に近い規模で迅速な実施ができました」(吉澤氏)

 運営はボランティアベース。VCとスタートアップ各社から連日、累計で570人に上るボランティアがスタッフとして職域接種を支援し、吉澤氏、金谷氏も接種会場に張り付きで対応にあたった。

 この経験から、大企業とスタートアップで働く人の健康面での格差を痛感した吉澤氏。「VCの立場で、ボランティアベースでスタートアップに従事する人たちの健康を支えるのでは持続性がない」と考え、金谷氏と健康保険組合の設立を検討していった。

 おりしも「スタートアップ5か年計画」が2022年11月に発表され、「タイミングは今しかない」と2022年12月に健保組合新設準備のための社団法人を設立した。

 吉澤氏はもともと、看護師を志して大学の看護学部に入った経歴がある。

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