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立ち上がる“スタートアップ特化の健康保険” 保険料率8.98%、設立の背景は

ITmedia NEWS / 2024年6月4日 10時45分

 「電子カルテが導入されていない当時、人件費の高い医師や看護師がグラフの線を手で引いているのを実習で見て、違和感がありました。電子化の財源となる医療保険制度について調べるうちに、米国ではヘルスケアスタートアップのプロダクトを導入している医療保険があると知り、卒業後にはVC業界へ入ることにしたのですが、改めて10年ぶりぐらいにこの領域へ戻ってきたというところです」(吉澤氏)

 吉澤氏と共に職域接種の実現に設立当初から尽力し、健保組合設立にも当初から関わってきた金谷氏は、成長フェーズのスタートアップで上場準備業務や経営管理に携わり、東証マザーズ(当時)へ上場したのちに、医療系スタートアップのCAPSで取締役COOとしてクリニックチェーンの運営支援システムや健康経営支援サービスを手がけていた。スタートアップの管理業務を含めた実態にも詳しいということで、VC出身の吉澤氏と二人三脚で健保組合設立を進めてきた。

 現在は吉澤氏、金谷氏らとともに職域接種会場の運営に関わったメンバーや、健保組合出身、日本年金機構出身といった社会保険事業の経験者を中心に、エンジニアも複数名加わり、健保組合に参画している。

 「健保組合の中にエンジニアがいるというのは、かなり珍しいんじゃないでしょうか。将来の電子化やヘルスケアサービスのオンライン化を見据えた布陣です」(吉澤氏)

●スタートアップ“業界”を定義するための工夫

 健保設立と同時に加入する事業所は180社。設立後の加入を希望する328社と合わせて、加入予定の事業所数は508社となる(5月17日現在)。1社あたりの平均被保険者数は38人。比較的大きな規模のスタートアップが多いが、シード期も含めた幅広いステージのスタートアップから問い合わせが来ているという。

 スタートアップの健保組合を設立したい思いから始まったこの取り組みだが、実は、スタートアップだけを対象にした健保組合を作ることは、現在はできない。健保組合の加入企業を定義する際の基準となるのは「業種」か「資本関係」だからだ。「スタートアップ業界」と一口にいえども、その業種の内訳はB2Cのサービスからヘルスケア、核融合まで幅広く、共通ではない。

 「厚生労働省とも交渉した結果、全てのスタートアップが参加できるわけではありませんが、より早く確実に健保組合を設立するためにベンチャーキャピタルを業種として定義し、VCと資本関係がある企業としてスタートアップを定義する枠組みにのっとって、VCとスタートアップが入る健保ができました」(吉澤氏)

 吉澤氏らは「我々としては、スタートアップのエコシステムで働く人たちと大企業との環境の格差に焦点を置いている」として、健保に入らない企業も含め、設立母体となった社団法人でスタートアップ全般への支援も健保設立と同時に進める。

 具体的には就業規則のテンプレート提供や、産業医との連携によるリモートワーク従業員の健康増進策などのコンテンツ提供などを予定。健保に加入していないスタートアップにも公開していくという。

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