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求められ続ける成長にさよなら とあるスタートアップが“値上げなし”でやっていけるカラクリ

ITmedia NEWS / 2024年7月22日 11時42分

 値上げをしない姿勢やブートストラップ型の選択を踏まえ、invoxは自らを事業の成功と社会貢献の両立を目指す「大人のスタートアップ」と称する。「今応募してきてくれる方も、大人のスタートアップというこのキーワードを魅力に感じてくれる方々が多いんです」と横井代表。

 社内でも、従来型の厳格な目標管理やノルマ設定は行っていない。横井代表は「目標とか計画もあまりない。ノルマとかはあるわけがない。その方が仕事が楽しいと思っている」と語る。営業部門でも個人ごとのノルマは設けておらず、月末に目標達成を迫られるようなプレッシャーをかけない方針だ。ただし、数字を見ることの重要性は認識しており、社員自身が改善のために数字を確認することは推奨している。

 「いわゆるキラキラ系の、資金調達いっぱいしてドンドン行くぞ、みたいなスタートアップというよりは、ちょっと地に足がついてて、自分たちの仕事が社会貢献につながるみたいなイメージに共感してもらっている」

 すでに行っている請求書1枚につき1円の寄付に続き、invoxは社会貢献の新たな形として、請求書データを活用したCO2排出量計測サービスの開発も進めている。

 「請求書をやりとりしてたまるデータってすごい価値があるんです。どの会社とどの会社が何をいくらで取引してるかが分かる。その情報を活用して、企業のScope3排出量(サプライチェーンにおける温室ガスの排出量)の計測や、カーボンクレジットの創出・販売を検討しています」

 これらの取り組みも、invoxという事業基盤を活用した社会貢献の一環という。「ビジネスとしての収益を期待しているわけではありません。むしろ、私たちの事業を通じて社会に貢献する方法です」と横井氏は位置付ける。

 「私は、会社というのは自分たちのやりたいことを実現するための器だと考えています。ただ資金を調達するために、本来やりたかったことができなくなってしまうのは本末転倒です。そうなると、長期的に事業を楽しむことができなくなってしまう。だからこそ、私たちは社会貢献と事業の両立にこだわっています。これにより、持続可能な形で私たちの理念を実現できると信じています」

 invoxの「大人のスタートアップ」としての取り組みは、SaaS業界の常識への挑戦でもある。値上げを行わない方針、ブートストラップ型の成長、そして社会貢献との両立。これらは3年での黒字化と2万社を超える導入企業数が示すように、単なる理想論ではない。

 横井氏の追求する「持続可能な形での理念の実現」は、スタートアップの在り方に一石を投じている。急成長と短期的利益追求に偏りがちだった業界に、長期的視点と社会的価値という新たな軸をもたらしたのだ。invoxの存在は、ビジネスの成功と社会貢献の両立可能性を示す、新たなモデルとなるかもしれない。

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