1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

欧州に学ぶ“放送IP化”のススメ 「放送制御システム」の限界をどう乗り越えるか

ITmedia NEWS / 2024年8月7日 8時10分

 加えて、コンテンツ需要の増加に対して、限られたリソースでどのように対応するかという課題がある。これは3つのカテゴリーで考えるべきである。

 まずスタッフをどこに配置するべきか。カメラマンのように、現地に張り付きでいなければならないスタッフもいれば、別の場所で働けるスタッフもいる。無駄に全員が現場入りする必要はなく、もっと効率的に人員が配置できるだろう、ということである。

 2つ目に、処理を行う場所の問題。それぞれの技術要素を最適な状態に配置するため、どこでそれを行うべきか。例えば現場に近いほうがいいのか、それとも局舎の中で処理すべきなのか。クラウドを利用するなら、プライベートクラウド内なのか、パブリッククラウドの拡張性を利用するべきなのか。

 3つ目に、それらをどのように接続するべきか。5Gやワイドエリア接続のような技術が非常に重要になっているが、これらは全て、異なる拠点、異なる人々を結び付けて、制作プロセスを効率的に連携させるためのものである。

 このゴールは、ハードウェアとソフトウェアの融合、適切なツールの選択、最適な場所への配置によって、効率を最大化することだ。

●どう乗り越える? 「放送制御システムの課題」

 IPのメリットは、3D、UHD、HDRといった必要要件に対して、それぞれ専用のハードウェアはシステムを用意しなくても済むところにある。SDIではそれらの方式が要求する最大要件でシステムを設計して備えなければならなかったが、IPではシステム内の多くがソフトウェア化されることで、どの方式にも対応できる。

 とはいえ、ヨーロッパにおいてもシステムを一度にIP化することはできず、部分的な入れ替えが行われている。ここで問題になっているのが、既存の放送制御システム(ブロードキャストコントローラー)の限界だ。放送制御システムとは、映像や音声のルーティングや、カメラやサブなど放送に必要な機器リソースを、放送スケジュールに応じて切り替えるシステムである。

 SDIのシステムでは、このブロードキャストコントローラーを中心にしてつながるものはつながるし、つながらないものは人が操作して自動操作可能な空き入力ポートにつなげる必要がある。システムが管理できるものとできないものに、はっきり別れていた。

 だがシステム全体がIPになると、ブロードキャストコントローラーを介さなくても各デバイス同士がつながることになる。また遠隔地にある機器も、手元にある機器と同じようにつながってくるため、膨大なデバイスやエンドポイントを管理する必要が出てくる。IPベースになれば、まずブロードキャストコントローラー自体を見直さなければならない。最終的なゴールは、人材や機材がどこに存在してもコンテンツ制作に寄与できるという状況を実現する事だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください