アインシュタインが納得しない「量子もつれ」を新たな実験で実証か 中国チームが高性能装置で検証
ITmedia NEWS / 2024年8月21日 8時5分
アインシュタインのイラスト
中国科学技術大学などに所属する研究者らが発表した論文「Loophole-Free Test of Local Realism via Hardy’s Violation」は、改良した高性能な装置を用いて「量子もつれ」(2つの粒子がどれだけ離れていても相関関係を保つ現象)を実験的に検証した研究報告である。
この実験は、アインシュタインが1930年代に「不気味な遠隔作用」と呼んで懐疑的だった“量子もつれした粒子が極めて遠い距離を隔てていても瞬時に影響し合うように見える現象”を検証するものだ。アインシュタインの疑念から約30年後、物理学者のジョン・ベルはこの奇妙な可能性を検証する方法「ベルの不等式」を考案した。
その後、多くの実験がベルの不等式を基に行われ、全ての実験結果が同じ結論に達した。つまり「局所実在性」(物事の性質は観測と無関係に存在し(=実在性)、離れた場所にある物体同士は瞬時に影響し合うことはない(=局所性)という考え方)が“成り立たない”というものだ。これは、物体の状態が観測されるまで確定せず、非常に離れた粒子間に量子力学的な相関関係が存在する可能性があることを意味している。
また、ベル不等式を用いずに量子力学の非局所性を示す「ハーディのパラドックス」があるが、これまでの実験では装置の不完全性のために、完全な証明には至っていなかった。
今回の実験では、これらの問題を解決してハーディのパラドックスを実験的に実証するために、いくつかの技術的改良が行われた。まず、82.2%という高い検出効率を持つ超電導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)を使用した。次に、99.10%という高い忠実度を持つエンタングルメント源(量子もつれ状態にある粒子対を生成する装置)を開発した。
さらに、高速な量子乱数生成器(QRNG)を用いて測定設定を選択することで、測定の独立性を確保。測定装置をアリス地点が93m、ボブ地点が90m離れた場所に配置し、光速を考慮しても信号が伝わらない程度の時間間隔で測定を行い、局所性の仮定を満たした。
実験では、同時に2つの量子もつれした光子を放出し、それらを反対方向に送り出す。各光子は、アリス地点(93m離れた場所)とボブ地点(90m離れた場所)の検出器にそれぞれ到達し、そこで偏光(光粒子の向きを表す性質)を測定した。
これらの検出器では、偏光を異なる角度で測定できるが、どの角度で測定するかは高速な量子乱数生成器を用いてその場でランダムに決まる。これは、量子もつれ以外の要因による相関関係の可能性を排除し、実験結果が真に量子力学的な現象によるものであることを示すためである。
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