安い電気を“買いだめ”するという発想 ポータブル電源は「家庭用蓄電システム」の夢を見るか
ITmedia NEWS / 2024年11月15日 12時22分
一方固定式ではないポータブル電源では、家庭用コンセントの後ろに取り付けるので、基本的に電気工事や施工費は不要だ。今回対応モデルに選定されたDELTA 2は容量1024Whのタイプだが、それほど大型というわけではない。シリーズには最大容量モデルのDELTA Pro Ultraがあるほか、専用拡張バッテリーで容量が増やせるDELTA 3 Plusなどのラインアップもある。これぐらいの容量になれば、固定式家庭用蓄電システムと変わらない。将来的にはこうしたモデルも、対応となるだろう。
●想定される2つの「宿題」
余剰電力の廉価販売は、Looopのような小売事業者だけでなく、電力大手でも行われている。例えば九州電力では、太陽光発電が余る時間帯には「使っチャレ」というチャレンジ企画を実施している。これは指定された時間に通常以上の電力を使うと、その分がPayPayポイントで還元されるという仕組みだ。
筆者はこうしたイベントが発生するたびに手動でポータブル電源への充電時間をセットしているわけだが、こうしたことが自動化されれば、電力会社にとっても利用者にとっても大きなメリットがある。
ただポータブル電源への充電は、安いからといっても充電容量には限度があるし、高いからといって放電しっぱなしにしても容量がそこを突く。1日の電力利用をサイクルとして勘案しながら、明日は電力が安くなる予報だから前日にはなるべくバッテリーの空きを多くしておこうとか、雨が続くから安くはないが、強いていえば安いといえる時間帯を探して充電するといった、細かい傾斜配分が必要になる。
そうした毎日変化する事情への対応が、YanePortのアルゴリズムに要求される。さらに言えば、ユーザーのバッテリー残量はまちまちなので、それにも自動対応する必要がある。おそらくAIを使って1台ずつ個別に制御することになるのだろうが、そのAIを鍛えるための、1年間の実証実験ということだろう。
もう一つの宿題、というか懸念としてあるのは、そもそもこうしたサービスが成立するのは、太陽光発電のせいで電力料金が時間変動するからである。だがこうした変動に対応すべく、現在系統電源に接続する大型蓄電施設の建設が、日本全国で活性化している。系統電力用蓄電施設の運用も、電力事業者として正式に認可されたからだ。オリックス、KDDI、石油資源開発(JAPEX)、日本蓄電、東京ガスなどの大手企業が続々と名乗りを上げている。
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