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「牛角の女性半額キャンペーン」とはなんだったのか ジェンダー割引という“男性差別”を慶大研究者が考察

ITmedia NEWS / 2025年1月10日 8時5分

「牛角の女性半額キャンペーン」とはなんだったのか ジェンダー割引という“男性差別”を慶大研究者が考察

 慶應義塾大学に所属する國武悠人さんが発表した論文「Gender-based pricing in Japan: changes in consumer perception and reputational risks」は、大規模な批判を受けた牛角の女性限定半額キャンペーンの事例を通じて、日本における性別に基づく価格設定、特に女性限定割引について、企業が直面するリスクと消費者意識の変化を分析した探索的研究である。

 2024年8月、大手焼肉チェーン「牛角」が実施した女性限定の食べ放題半額キャンペーンを巡って「男性差別である」との批判がSNSで巻き起こり、その後メディアでも大きく取り上げられる事態となった。

 この問題は、日本社会における重要な転換点となっている。これまで飲食店やアパレル、エンターテインメント業界では「レディースデー」や「女性限定割引」が一般的なプロモーション手法として用いられ、女性客の来店促進や新規顧客獲得に一定の効果があるとされてきた。しかし、この慣行が初めて大規模な批判に直面したのである。

 牛角を運営するレインズインターナショナル(横浜市)は、この割引について「女性は男性より約4皿ほど注文量が少ない」という統計的傾向に基づいて実施したと説明した。さらに「カップルで来店すれば1969円お得になる」として、男性も間接的に恩恵を受けられると主張した。

 しかし、この説明は消費者に受け入れられなかった。カップルは男女の組み合わせだけではなく、男性同士のカップルは恩恵を受けられない一方で、女性同士のカップルは二重の恩恵を受けられることになり、性の多様性への配慮が不十分だと指摘されたのである。

 また、性的マイノリティーへの対応について、同社は「想定外のケースもあるため、店舗ごとに適切に対応する」と述べたが、これも批判を招いた。統一的な基準のない店舗ごとの対応は、かえって消費者の信頼を損なうリスクがあると指摘されている。

 さらに、日本のLGBTQ+人口は約9.7%とされており、割引を受けるために性的指向や性自認をカミングアウトせざるを得ない状況を作り出すことへの懸念も示された。

 日経ビジネスの記事では、女性限定割引には2つの問題があると指摘している。一つは男性に対する「機会損失の問題」としての差別、もう一つは女性に対する「ジェンダー役割の問題」としての差別である。後者は、女性の能力や野心、自立を損なう可能性があることが複数の研究で示されている。

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