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「牛角の女性半額キャンペーン」とはなんだったのか ジェンダー割引という“男性差別”を慶大研究者が考察

ITmedia NEWS / 2025年1月10日 8時5分

 SNS上での消費者の反応を統計的に分析したところ、牛角に対する否定的な投稿は発表直後から急増。その後、投稿数自体は1週間程度で減少したものの、否定的な投稿の割合は高い水準を維持し続けた。

 注目すべきは、日本のZ世代(若年層)の男性の意識変化である。コンサルティング企業の仏イプソスの平等さに関する調査(イプソス平等指数 2024)によると、日本の若年男性は他国と比較して、自分たちが不平等な扱いを受けているという意識が顕著に高い。これは、日本社会でジェンダー平等が選択的に適用されてきたことへの不満が高まっていることを示唆している。

 24年時点で日本にはこれらの禁止法が存在しないため、女性限定割引は明示的に禁止されておらず、法的リスクは小さい。一方、米国やEUの先進国では、すでにジェンダーに基づく価格設定は主に違法な差別として扱われており、多くの司法判断や行政指導がなされている。

 例えば、米カリフォルニア州では1985年の判例で、性別による価格差は有害なジェンダーステレオタイプを強化し、男女双方に悪影響を及ぼす可能性があるとして違法と判断された。

 このような消費者意識の変化を踏まえると、企業が短期的な利益を追求して消費者の多様性や公平性を無視した施策を実施することは、長期的なブランドイメージや企業価値を大きく損なうリスクがあるといえる。

 特に、特定のジェンダーに限定しない幅広い顧客層を対象とする企業にとって、ジェンダーステレオタイプを強化するような販促施策は、得られる利益以上のリスクを伴う可能性が高い。

 日本における平等意識の高まりとZ世代の男性の不満を考慮すると、企業はこうした女性限定割引のリスクを十分に理解し、その実施の是非を慎重に判断することが求められている。

 Source and Image Credits: Kunitake, Y.(2025), “Gender-based pricing in Japan: changes in consumer perception and reputational risks”, Corporate Communications: An International Journal, Vol. ahead-of-print No. ahead-of-print. https://doi.org/10.1108/CCIJ-09-2024-0169

 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2

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