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アニメ映画版「ルックバック」レビュー 「創作」の意義を見つめた、ひとつの到達点

ねとらぼ / 2024年6月29日 20時0分

アニメ映画版「ルックバック」レビュー 「創作」の意義を見つめた、ひとつの到達点

「ルックバック」 2024年6月28日(金)より全国公開 (C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会

 「ルックバック」が6月28日より劇場公開中。同作は2021年に「ジャンプ+」で公開され大きな話題となった、「チェンソーマン」で知られる藤本タツキの読み切り漫画を原作としたアニメ映画だ。

 その本予告が公開されたときも「原作の絵がそのまま動いている」ことなどに絶賛の声が相次いだが、本編の衝撃と感動はそれをはるかに上回っていた。「創作」にまつわる寓話としても、漫画のアニメ映画化作品としても、ひとつの到達点だった。

 なお、本作の上映時間は58分(鑑賞料金は1700円均一)。だが、アニメのクオリティーと物語の密度が半端ではないため、その短さを感じさせない満足度がある。こだわりの演出の数々と、haruka nakamuraによる流麗な音楽を堪能できる、劇場での鑑賞でこそ真の感動があると断言できるので、その機会を逃さないでほしい。

 本編の決定的なネタバレに触れない範囲で、さらなる魅力を記していこう。

●河合優実と吉田美月喜の最高のハマりぶり

 本作の主人公は、学生新聞で4コマ漫画を連載していい気になっている小学生の「藤野」と、同学年の不登校の「京本」の2人。藤野が卒業証書を京本の家に届けに行ったことをきっかけに、2人は一緒に漫画を描きつつ共に青春を過ごしていく。

 まず魅力的なのは、主人公の女の子2人の関係性。一方は自信家で負けず嫌い、一方は引きこもりだったけど素直。いわゆる「共依存」的な危うさを示しつつも、不器用さを含めてかわいい、正反対の2人が漫画をきっかけにつながり、楽しく過ごす様が描かれていく。

 その2人を「ずっと見ていたくなる」「幸せを願いたくなる」のはもちろん原作からのことだが、これが躍動感たっぷりのアニメーションとして表現される。さらに、声を担当した河合優実と吉田美月喜の表現力が彼女たちの尊さを加速させている。前者は不満を溜めたり毒づいたりする様、後者はたどたどしくも漫画や絵への想いを伝える様も含めて愛おしいのだ。

 しかも、藤本が標準語で話し、京本が方言で話すというのは、原作ではそれほどはっきりとはしていなかった、今回のアニメ映画独自の演出だ。雑誌「SWITCH」7月号のインタビューで、押山清高監督は短い尺の中で京本のバックボーンを表現するため、「この東北の土地で部屋に引きこもり、世間の人とコミュニケーションを取っていない」「とても純粋な女の子だと思うし、人目を気にするような子でもないし、真っ直ぐ自分の道を歩んでいくタイプの子だと思った」と、この訛りの演出を取り入れた意図を語っている。

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