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映画「ルックバック」を読み解く3つのポイント 「ひとつまみのファンタジー」がピリリと効いた傑作青春アニメ

ねとらぼ / 2024年7月12日 18時5分

映画「ルックバック」を読み解く3つのポイント 「ひとつまみのファンタジー」がピリリと効いた傑作青春アニメ

映画「ルックバック」(C)藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会

 「少年ジャンプ+」(集英社)での衝撃の配信から約3年。2024年6月28日に藤本タツキの読切マンガ『ルックバック』(監督:押山清高)が劇場版アニメとなり、公開がはじまった。

 原作は、2021年7月の配信当時、一般読者に加えて人気マンガ家やクリエイターからも絶賛される。その理由はさまざま。まず、マンガ家マンガの金字塔『バクマン。』(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)の再来を思わせるような、モノづくりにかける熱いストーリー。そして、グロくてイカれた藤本タツキ代表作『チェンソーマン』とは真逆を行くリアル路線……と思わせてからの、終盤での超展開。多くの感想や考察がWeb上で飛び交い、配信がはじまってからわずか2日で閲覧数は400万回を超えた。

 それから約3年の間に、『ルックバック』を読み解くカギとなる作品――長編読切第2弾『さよなら絵梨』や『チェンソーマン』第2部が発表された。これらを比較すると、藤本タツキが実践し続ける創作の方法論や、ジャンルを越えて描く共通のテーマが見えてくる。本稿では以上のマンガをヒントにして映画「ルックバック」を考察し、見どころを紹介する。

●1:描かれるのは「他人事」ではない「自分事」

 「ルックバック」の物語は、小学4年生の藤野(CV:河合優実)と不登校の同級生・京本(CV:吉田美月喜)がマンガ制作をきっかけに出会うところからはじまる。どちらのマンガが優れているのか? 2人は学年新聞に載せる4コママンガで熾烈(しれつ)な人気争いを繰り広げる。

 転機となったのは卒業式の日。初めて彼女たちは顔を合わせる。そして、互いの実力を認め合っていた2人はコンビを組み、商業誌の新人賞への投稿作品を一緒に描くことになる。

 この作品では、何かに没頭する時間というものが究極的に美しく描かれる。藤野の自室から望む季節の移ろいを見せることで、飛ぶように時間が過ぎてゆくのが表現される。そして映画版では、作者の故郷・東北の穏やかな田園風景も交えて描写される。だからより一層、藤野たちが創作に費やした時間がかけがえのないものだと伝わってくる。

 本作の藤野や京本の半生は、おそらく作者の自己投影だ。そう解釈する理由は、『ルックバック』配信の約1年後に刊行された長編読切『さよなら絵梨』にある。自主制作映画の撮影に打ち込む少年・優太の物語で、作中、藤本タツキの創作論と思われるせりふがちりばめられている。例えば、ヒロインの絵里が、優太の制作した半自伝的作品を絶賛するシーンでこう言う。

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