[古森義久]【米・日本の集団的自衛権行使容認は不十分】~「2015年日米安全保障セミナー」にて~
Japan In-depth / 2015年3月30日 11時0分
アメリカの首都ワシントンで3月27日、日本の集団的自衛権の行使を求める声が日米両国の代表たちによって強く発せられた。日本の国内での世論調査でなお反対が賛成を上回るという傾向とはだいぶ異なる現象だった。その落差は今後の日米同盟のあり方を考えるうえで改めて真剣に直面せざるをえない課題だろう。
同日、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で「2015年日米安全保障セミナー」という集いが開かれた。同研究所と日本国際問題研究所との共催で、ほぼ毎年、日米両方の官民の安全保障専門家たちが集まり、日米安全保障関係を議論する会合である。今年はまず自民党の高村正彦副総裁が基調演説をして、日本側の集団的自衛権行使容認という新たな動きを踏まえて、付随する安全保障法制の変化への取り組みなどを語った。だが高村氏がとくに強調したのは、以下の点だった。
「国民や国家の存立を守るためには集団的自衛権を行使するのが当然ではありませんか」
「一国で自国の平和を守れる国は地球上にはないため、集団的自衛権を放棄することはその国が国民の安全を捨てることになります」
アメリカ側の演説者はオバマ政権のデービッド・シェア国防次官補(アジア太平洋問題担当)だった。同次官補も日本の集団的自衛権について語った。
「日本が集団的自衛権の行使容認へと進んだことは日米同盟のより効率の高い運営のためには貴重な貢献となります」
「日本の集団的自衛権の行使はアジアでの米軍の抑止力を高め、平和や安定の保持に大きく寄与することになるでしょう」
オバマ政権としても安倍政権の憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認は大歓迎するというのである。
ところが後半の部の討論に登場した前ブッシュ政権の国務副長官だったリチャード・アーミテージ氏は安倍政権の今回の措置による日本の集団的自衛権の行使容認への支持を表明しながらも、なお日本側に注文をつけたのだった。
「安倍政権の憲法解釈の変更による今回の集団的自衛権の行使容認はもちろん日米同盟の抑止力への大きな貢献となります」
「しかし安倍政権の今回の措置はアメリカなど他の諸国のような集団的武力行使までは許容していないため、将来は日本も他国並みのところまで、集団的自衛権の行使をもっと進められるようにしてほしいです」
さてこうしたアメリカ側の声を聞くと、日本の国内の現時点での多数意見とは大きなギャップがあることがわかる。事実、アメリカの歴代政権は日本が集団的自衛権の行使を可能にすることを切望してきたのだ。そしてアーミテージ氏の発言のように、安倍政権の現段階での集団的自衛権の行使容認ではなお不十分だとみなす声が民主、共和両党の区別なくアメリカ側には存在することを日本とのギャップとして正確に認識しておくべきだろう。
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