[瀬尾温知]【即効性ある「ハリル効果」】~サッカー日本代表2連勝!~
Japan In-depth / 2015年4月1日 11時30分
日本代表はハリルホジッチ新監督の船出を2連勝で飾った。監督の志向する縦に速い攻撃をチーム全体で遂行し、個々の特色も表現された見事な2試合だった。対戦相手が移動による疲れで万全の体調でなかったことを差し引いても、過去に類を見ない好パフォーマンスだった。その要因はアジアカップで不動だった先発メンバーを大幅に入れ替えたことにある。
ワールドカップで惨敗し、アジアカップでも準々決勝敗退と好成績を残せずに停滞していたのは、代表メンバーが同じ顔ぶれのままだったことが原因だった。就任直後の取り組みだけを見ても、ハリルホジッチがアギーレよりも指導者としての先天性に長けていることはこれで顕著になった。八百長疑惑にかこつけて指揮官を交代できたことは、日本にとって幸運だったと改めて感じている。
競争心を煽られないと自ら研鑽しないようなプロフェッショナルでは困るのだが、ハリルホジッチはそのことに苦言を呈すかわりに、代表メンバーとバックアップメンバー合わせて43人の名を挙げ、これまでよりも多くの選手の自意識を高めることに成功した。
リハビリ中の長友、けがで離脱した小林と興梠、GKの東口と西川を除く代表メンバーの27人を2試合で使った。初陣のチュニジア戦では本田や香川といった中心選手をベンチに座らせ、代わりにグラウンドに立った選手たちに使命感を植えつけた。これまで出場機会のなかった面々は、持ち味をアピールしようと士気を高めていた。
そして2試合目のウズベキスタン戦で新顔が躍動した。日本で貴重な存在のミドルシュートを打てるMFの青山が、まさにそのミドルシュートで先制ゴール。浮き球をかぶせて打ち、枠の上に外さない芸術的なシュートだった。宇佐美は得意のドリブルでエリア内に進入してからゴールを決め、川又もゴール前でのそつのない位置取りから頭で押し込んだ。いずれも特色を生かしての代表初ゴールだった。
競争心を巧みに嫌味なく扇動するこの手法から見えるのは、教師の性質のそれである。上手に誘導して生徒の力を引き出して伸ばすことができる教師。ハリルホジッチは日本人との相性も良い。教師との相性が良ければ生徒は驚くほど伸びていく。
難しいのは、日本に適合した戦術を見つけ、修正を重ねて磨きをかけていくのが正しい道筋だとしても、勝利という結果が伴わなければ疑問を持たれてしまい、信頼を失ってしまうことである。
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