[七尾藍佳]【どうなる、自衛隊の「普通の軍隊化」】~今国会会期内成立目指す安倍政権~
Japan In-depth / 2015年4月2日 11時30分
<安倍首相「我が軍」発言は自衛隊の「普通の軍隊化」という最終ゴールを露わにした>
安倍首相が自衛隊を「我が軍」と呼んだことは、現在進められている新しい安全保障法制の正体を露わにしました。それは、自衛隊を「普通の軍隊」とすることです。そして安倍首相は、最終的には軍事力をテコに他国に影響力を行使することができる「グローバル・パワー」としての日本を目指しています。
たしかに、冷戦後一定の時が流れ、世界秩序における米国のヘゲモニーが崩れるとまでは行かないまでも現実問題としてその影響力が変質しつつある中、日本の外交・安全保障政策には再検討の必要が生じています。
ISIL(イスラム国)やイエメンのフーシなどの武装勢力がウェストファリア条約以来の主権国家を中心とした国際秩序を揺さぶり、中国は軍事力を強化し既存の国境線に圧力をかけ、北朝鮮はこれまで以上に不安定という情勢の中、有事の際に日本はどこまでアメリカに頼ることができるのか、そしてどこまで自らの武力で自国を守るのかが問われています。
この問いに対する答えは、世界における日本の役割をどう考えるか、つまり新しい日本の<国家像>によって変わってきます。どんな日本を目指すかで、自衛隊は世界のどこで、何をするのかが決まるのです。
<新安全保障法制という難解なパズルの完成図は「戦争のできる国」>
しかし、今の安全保障法制の改正作業で一番問題なのは、この順序が逆になっていることです。安倍首相は自らが最終的に目指す日本の国家像をはっきりとは言説化しないまま「対テロ」・「原油の安定供給」など個別の「現実のニーズ」に対応するためと説明し、改正案を積み重ねて行っています。
政府が進めている新安全保障法制の策定に対して、国民が今ひとつはっきりとした態度を示せずにいるのは、ひとえにその「全体像が見えない」からです。しかし、小出しにされる情報を俯瞰してみるとその全体像が見えてきます。
3月20日に自民・公明両党が合意した骨格で最も注目すべきは以下の3点です:
アメリカなど「密接な関係国」の軍隊をグローバルに「後方支援」することができるように「周辺事態法」の地理的制約を撤廃。政府は集団的自衛権にも地理的制約は無いとしていますから、例えばアメリカが中東で攻撃をされた場合、日本は集団的自衛権を行使するとして米軍の「後方支援」に当たることができるようになります。
「国際協力」目的で自衛隊が米軍以外の他国の「後方支援」を行えるように新たな恒久法を制定。「国連」の決議に基づかない有志連合の活動にも参加できるようになりますから、国際社会の広い賛同を得ていないオペレーションにも参加できることとなり、潜在的に日本のレピュテーション・リスクは高まります。また、周辺事態法・新恒久法いずれにおいても「後方支援」に関しては「武力行使」目的ではないとして「新3要件」は適用されません。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプがウクライナ支援を減らすならイギリスが軍隊を送る必要がある── ジョンソン英元首相
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月14日 16時41分
-
山上信吾 日本外交の劣化 石破外交の致命的〝欠陥〟に迫る 噴飯ものアジア版NATO、大統領稼業「バージョン2」となったトランプ氏と「信頼関係構築は無理」
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月12日 11時0分
-
自衛隊を支える改革 小笠原理恵 軍事転用加速、自衛隊は人手不足補う「ドローン」利用も 変わった戦争構図、映画「ターミネーター」のように人間が機械に追われる日が
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月11日 6時30分
-
北朝鮮軍に"頼る"ロシアの姿勢が激変した事情 ついに交戦開始、北朝鮮側が得るものは?
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 10時0分
-
『日本の安全』をどう確保するか? 答える人 元防衛大臣・森本敏
財界オンライン / 2024年10月25日 18時30分
ランキング
-
1「スギ薬局」が別患者の薬混入し女性死亡 遺族に調剤ミス認め、4000万円支払いで和解
産経ニュース / 2024年11月22日 17時29分
-
2【判決】“不倫を続けるため殺害” 妻と1歳の娘を殺害した男に無期懲役 裁判長「酌むべき点は皆無」と断罪 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年11月22日 19時22分
-
3日本一の納豆は?消費量が全国46位の大阪で『全国納豆鑑評会』 会長「納豆のおいしさに、まだ目覚めていただいていない」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時0分
-
4大阪・貝塚市の港 両脚縛られた遺体は大阪市の26歳男性と判明 両親は「将来の夢を持って、毎日頑張っていた」
MBSニュース / 2024年11月22日 16時5分
-
5新潟市南区妻子殺害事件 被告の男に無期懲役の判決 新潟地裁
BSN新潟放送 / 2024年11月22日 15時2分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください