[清谷信一]【お粗末な自衛隊の「衛生」装備】~チュニジアでテロにあった女性医官は「特別」なのか?~
Japan In-depth / 2015年4月9日 11時30分
先日チュニジアを訪れていた際に、テロに遭って負傷した陸上自衛隊(以下陸自)の女性医官、結城法子(のりこ)3佐に対する批判が多い。テロに遭った後の取り乱しようは「軍人としてなっておらん」というものだ。だがその「軍人としてなっておらん」というのは一人彼女だけに当てはまることだろうか。
3月18日、チュニジアの首都・チュニスで発生したテロ事件に巻き込まれた。死傷者は約70人に達し、その中には邦人含まれ、死者3人を含む6人が被害に遭った。結城3佐は巻き込まれたが、結城3佐はその中の1人だった。同3佐は休暇を利用して母親との観光旅行中だったが、左耳などに怪我を負い、現地の病院に搬送されて手術を受けた。彼女は手記を発表したがその内容があまりに、情けないと批判されている。
だがそのような批判は正しいだろうか。例えば武道の達人でも全くの隙を突かれて、後ろから金属バットで頭を殴られれば動転してまともに反撃はできないだろう。これは軍人も同じだ。365日、24時間自衛官として精神的に臨戦態勢を維持しろというのは無理難題もいいところだ。例えばPKOで覚悟を決めて任務に赴くのとはまったく違う条件だ。自衛官にスーパーマン的なヒーロー性を求めるのは幼稚ですらある。
一方で彼女にも問題点があった。本来必要な渡航許可を取らなかったことだ。それが単にまあ、いいやという「いい加減さ」からなのか、あるいはチュニジアという渡航先としては若干問題があるところで、渡航申請をしたら許可されないだろうから許可しなかったのは明らかではない。本来マスメディアはこういうところを突くべきだ。だが爾後の彼女の様子は「軍医」としては如何なものか不安を感じるのも確かだ。手記には以下のようにある。
「病院へ着くと、パスポートなどが入ったバッグはとられて、携帯もなくなってしまいました。日本大使館の方がいらして、日本の家族の連絡先を聞かれましたが、携帯がなかったので実家の固定電話しか分からず、なかなか連絡がつかなかったようです」
本来第一に連絡を取るべきは自分の上司だろう。無断渡航の身であれば尚更だ。負傷した直後であれば混乱やパニックは仕方ないにしても、職業意識に欠けているとしか言いようがない。だがこれは彼女だけの問題だろうか。自衛隊の衛生関係者の中に、他に「結城法子」はいないだろうか。筆者は多くの「結城法子」がいるように思える。いや、多数派が「結城法子」ではないか。
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