[岩田太郎]【安倍首相、米議会演説の「二枚舌訳」は戦後日本の二重性の象徴 1】~その始まりとは~
Japan In-depth / 2015年4月27日 19時0分
もっとも、当の陸軍省には語学に優れた人材が豊富で、subject toを「連合国最高指揮官に隷属すべきものなること」と正しく和訳し、「決して対等の地位にあらず。天皇の上に統治者あり、国体(天皇の大権と神聖)の根本的破壊なり」として、本土決戦を含む徹底抗戦を主張した。
だが同回答には、「天皇は日本国政府及日本帝国大本営に対し、ポツダム宣言の諸条項を実施する為必要なる降伏条項署名の権限を与え、且之を保障することを要請(require=「要請」ではなく命令に近い要求の意味)せられる」とあり、占領軍の日本統治に天皇の権威と力が不可欠であることが示唆されていた。自信を得た昭和天皇は、ポツダム宣言受諾の聖断を下す。
天皇は占領軍に隷属しながらも、日本国民向けの占領軍の正統性の説明や権威付けに不可欠の存在であり、マッカーサー連合国最高司令官の上で「間接統治」したと言えなくもない。事実、昭和天皇が1945年9月27日にマッカーサーを訪問した2日後に発表され国民に衝撃を与えた、「直立不動で正装の天皇と、リラックスした服装・姿勢の巨人マッカーサー」の写真以外にも当時未発表の写真があり、その中で天皇は微笑みながらリラックスした姿勢をとり、マッカーサーの姿勢や表情は硬い。そこに戦後日本の二重性の始まりが象徴的に表れている。
こうして戦争は終結したが、戦後日本は戦争を言い表す際に、対外向けの説明と対国内向けの説明を使い分け続けなければならないジレンマに閉じ込められ、現在の二枚舌外交に至る。次回は、その歴史を振り返ろう。
(この記事は、【安倍首相、米議会演説の「二枚舌訳」は戦後日本の二重性の象徴 2】〜戦後は終わらない〜 に続きます。全2回))
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