[岩田太郎]【安倍首相、米議会演説の「二枚舌訳」は戦後日本の二重性の象徴 1】~その始まりとは~
Japan In-depth / 2015年4月27日 19時0分
不毛な言葉遊びが、また繰り返されそうだ。訪米中の安倍晋三総理大臣が4月29日に、米議会の上下両院合同会議で「未来志向」の英語演説を行い、日本敗戦70周年の歴史問題の認識については「侵略」と「反省」などの言葉を使って、米国民や世界にアピールする予定だ。
具体的には首相が4月22日にインドネシアのバンドン会議演説で使用した「侵略(aggression)」と「深い反省(deep remorse)」という表現が踏襲されるという。4月24日付の『読売新聞』は解説記事の中で、remorseの和訳が内省を想起させる「反省」であるのに対し、英語のニュアンスとしては「罪悪への深い後悔」を表す、かなり強い表現であることを紹介。
さらに、安倍首相が慰安婦問題に言及する場合に使用すると予想されるhuman traffickingについては、日本語訳の「人身売買」が必ずしも強制連行を想起させないのに対し、英語では「軍に限らず強制的な連行をイメージさせるもの」だと指摘している。さらに、首相の立場である「歴代内閣の歴史認識を全体的に引き継ぐ」に関しても、「そっくりそのまま」を意味するin its entiretyが使われ、日本語の「必ずしもそのままではない」というニュアンスと異なっていると伝えた。これら訳語の選択は、4月上旬に訪米して米側の意図を探って来た首相の英語のスピーチライター、谷口智彦内閣官房参与の発案だとされる。
読売記事は意図してか、意図せずしてか、安倍首相が国内向けには日本の戦争責任をより軽く表現する一方、国外向けには日本の戦争責任をより重く解釈可能な表現を使い分ける二枚舌宰相であることを暴露した。オーストラリア国立大学のテッサ・モリス=スズキ教授は、最近の評論でこの「訳語外交」を非難。
元外交官の天木直人氏(外務省において、谷内正太郎内閣官房国家安全保障局長、藤崎一郎元駐米大使、藪中三十二立命館大学特別招聘教授などと1969年に同期入省)は、「語るに落ちる(問い詰められるとなかなか言わないが、勝手に話させるとうっかり秘密をしゃべってしまう)とはこのことだ」と評した。
だが、日本政府、特に外務省の二枚舌は今に始まったことではない。有名なところでは、1945年8月11 日に日本の無条件降伏受諾に関して、米国務省が敗戦後の天皇の地位を示した「バーンズ回答」の、the authority of the Emperor… to rule the state shall be subject to the Supreme Commander of the Allied Powersという文言を外務省が「天皇の・・・国家統治の権限は、連合軍最高司令官の制限の下に置かるるものとす」と訳し、subject toにある従属・隷属・服従の意味を意図的に薄め、軍部が降伏を受け入れやすくなるよう画策した。
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