[岩田太郎]【米・ボルティモア暴動を読み解く 2】~現代版奴隷制の「監獄プランテーション」~
Japan In-depth / 2015年5月8日 11時0分
今回の蜂起が起こったボルティモアの財政構造は、白人警官による丸腰の黒人マイケル・ブラウン君(享年18)の射殺が訴追されなかったことで、昨年12月に暴動が起きたミズーリ州ファーガソンに酷似している。ファーガソンのように失業率が高く、貧しい黒人が多いボルティモアなども市財政の大半を軽犯罪の罰金や、裁判所の課す手数料に頼っている。
警察は貧しい黒人に難癖に近い罪を着せて罰金を徴収し、凶悪な罪を犯していない者でも罰金を支払えなければ収監し、裁判手数料を搾取する。いつまでも、罰金支払いのサイクルから抜け出せない構造である。黒人が大半を占めるミズーリ州ビバリーヒルズ市に至っては、住民一人当たりの軽犯罪罰金が毎年400ドルで、逮捕率は全米の100倍という有様だ。収監中の家族ビデオ面会や通話にも高額課金し、懲役囚を無料労働させる監獄産業も同時に利権で潤う仕組みである。まさに、現代版の奴隷制の「監獄プランテーション」だ。
一方、貧しい黒人へのリスクを無視した住宅ローン貸付けが破綻した後に残ったのは、差し押さえ執行であり、街のスラム化の進行だ。こうしたなか多くの人は「ペイデー・ローン」と呼ばれる、年利400%という法外な利息を課すヤミ金に頼り、二度と抜け出せない借金地獄に閉じ込められる。
学校は、恵まれない家庭環境のもと不良になった黒人少年を更生させるのではなく、即通報して少年院に送る。立ち直りの機会が用意されない彼らは、大人の犯罪者になってゆく。学校と監獄は、太いパイプラインでつながっている。搾取と抑圧の長い腕は、どこまでも伸びて黒人を捕まえる。
悪意のある制度設計で、自力では立ち直れない状況に閉じ込められ、その責任を全て負わされ、犯罪化され、奴隷化される絶望は、往年の名ボーカルグループ「スピナーズ」が1973年にヒットさせた『ゲットー・チャイルド』に、次のように歌われている。「ゲットーの子として生まれたら、人生は容易ではない。誰も自分たちの状況を分かろうともしない」。
黒人のオバマ大統領はボルティモア蜂起を、「彼らは商店を略奪しているだけだ」と評したし、同市の黒人女性市長ステファニー・ローリングス=ブレイク氏も、暴動参加者を「ちんぴらども」と呼んではばからなかった。これは暴動の深層を見ることを意図的に拒否し、「何が逮捕や暴動の状況に至らしめるか」にフォーカスしないことから起こる。
カリフォルニア大学バークレー校のリチャード・ロスシュタイン教授は、「ボルティモアの危機は政府の政策の失敗にある」と指摘。「数十年に渡り、住宅政策で低所得層の黒人が特定のスラム地域に住まざるを得ない状況に仕向け、中流層と隔離したからだ。これが治安を悪化させ、攻撃的な警察の取り締まりや暴動を繰り返させている」という。
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