[上田令子]【バブルの遺産?臨海副都心構想を検証する】~オリンピックに浮かれている場合ではない~
Japan In-depth / 2015年5月9日 11時0分
豊洲新市場商業施設「千客万来」へ民間事業者二社どちらも撤退した件だが、これだけでも都民並びに関係自治体・団体には衝撃的であるのに、さらに追い打ちをかけるように舛添要一東京都知事が、民間企業に対し「証拠を出して下さい。ビデオを撮っていますか、録音テープありますか。都のどういう幹部があなたと話をして、温泉のことについてバーターしたんですか。じゃあ誰とやったんですか。何もないです」という「失言」をしたことが大きな話題をさらっている。この件を取り上げた私のブログにもアクセスが殺到している。
豊洲新市場というと、築地からの移転の是非や土壌汚染の問題を中心に過去都議会で紛糾してきたのだが、一昨年東京都議会議員となった私には若干違和感があった。それは「そもそもこの事業、今現在の時点において採算があっているのか、将来的に持続可能なのだろうか。」という基本的な議論の必要性を感じたからだ。そこで、公営企業委員会、公営企業決算特別委員会にて、豊洲新市場を所管とする「中央卸売市場」(都の公益企業事業局のひとつ)や、「臨海副都心開発事業」・港湾地区一帯を掌握する「港湾局」を審査する機会に恵まれたことから疑義を呈した次第だ。
そもそも臨海副都心開発は、まさに、バブル前夜の1986年鈴木俊一都政下の第二次東京都長期計画において、7番目の副都心として位置づけられた事業だ。時の鈴木知事の掲げた副都心育成のもと、都心部から業務機能を分散、誘導しようという多心化政策の一環として誕生したものが臨海副都心開発事業と、私は理解している。「バブルの塔」と言われた新都庁舎が開庁した1991年に皮肉にもバブルが弾け、批判が高まり、開発事業会計予算が否決されるなど、紆余曲折を経て今日に至っている。
そこで気になる点がある。臨海副都心では、土地処分や利活用については、売却、長期貸付、暫定利用とそれぞれの区画が点在しており、開発事業者においては、土地の利用期間も、償還期間も、そして目的も違うことから、建造物のクオリティーに差異が生じていることだ。プレハブのような建物もあれば、売却物件のアクアシティ、長期貸付のフジテレビ、暫定利用の「大江戸温泉物語」「ヴィーナスフォート」を比較すると、その差は一目瞭然。
この目的が違う三地区のある副都心において、どうバランスをとりながらまち並みのグランドデザインの統一化を担保して、三地区の特性をそれぞれ生かして事業を進められているのかがいまだ課題である。東京都によれば”臨海副都心まちづくりガイドライン“に沿っているので問題ないということなのだが、そのガイドラインのもと、2014年度にBMWが暫定利用区画へ進出している。「国際的な集客力が見込まれる体験型の展示施設の開設を目的に公募」したというが、国内外の観光客がわざわざ副都心で高級外車を求めるとは、にわかに想像ができない。
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