[西田亮介]【憲法改正の国民投票と政治理解の導線を再考せよ】〜ポスト大阪都の戦いに何を見るか〜
Japan In-depth / 2015年5月18日 11時0分
一般の選挙の運用を規定するのは公職選挙法である。ところが今回の大阪都を巡る住民投票は大都市地域特別区設置法、そして憲法改正を巡る国民投票は国民投票法がそのあり方を規定する。拙著『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)のなかでその特徴を「均質な公平性」と表現したが、日本の選挙運動は、公選法が選挙運動に利用可能な手段を定めるにあたって、ビラの枚数やポスターの大きさまで規定する制限列挙形式を採用することで、外形的な制約の強い選挙といえる。
大都市地域特別区設置法、国民投票法では、その点を巧妙に回避している。通常の選挙と異なり、大阪市の住民投票と、憲法改正の国民投票は「候補者なき選挙」である。公選法は、政治家や政党、関係者による贈収賄や売買収を防ぐことに重きを置いている。ところがこれらの選挙では、候補者は存在しない。理念型としては、ある制度変更とその理由を周知し、有権者はその内容を理解し、是非について一票を投じることが期待されている。周知(とその方法)を、通常の選挙よりも強力に行う必要があるということで、建付の多くを公選法で準用しながら、公選法の制限列挙部分を大幅に緩和したと考えられる。
大都市地域特別区設置法と国民投票法では、前者のほうが生活に密着した側面が強いからか、前者の方がテレビCMの期間などでさらに緩和されているものの、全体の構成は似ている側面も少なくない。ということは、当日の運動や演説、資金を相当程度投入したと思われる投票運動のあり方、ポスターの枚数等への制限のなさなどは、憲法改正の国民投票の際にも、より本格的な、そして全国を巻き込む形で踏襲されると考えて良い。広告代理店も、さらに本気になるだろう。
実際に、どのような投票運動が展開され、どのような問題が生じたか、有権者はきちんと大阪都構想の意義を理解して投票できたか、といった点は、これからの報道や検証を待つ他ないが、それらはやはり憲法改正の国民投票を先取りする景色であり、その縮図でもある。加えて憲法改正の議論の際には、投票年齢が18歳になっているだろう。現状、有権者が政治を理解し、大量情報を取捨選択しながら、的確に選択できているかというと心許ない。
下記のようなエントリを書いたこともある筆者だが、自分が住んでいるエリアの首長選挙はともかくとして、議員選挙になると、積極的な選択ができているかというと自信がなくなってくるというのが正直なところである。
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