[西田亮介]【憲法改正の国民投票と政治理解の導線を再考せよ】〜ポスト大阪都の戦いに何を見るか〜
Japan In-depth / 2015年5月18日 11時0分
社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ−−文部省『民主主義』を読んで(西田亮介)− Y!ニュース
また判例や前例が少ないだけに、きちんと規制が機能するかも気になるところである。2013年の公選法改正で部分的に解禁になったネット選挙では議論が煮詰まらないままに、解禁論だけが先行した。多大な期待がかけられながら、少なくとも投票結果の傾向に大きな影響を与えているとはいえない。前掲拙著では、その様子を「理念なき解禁」と表現したが、さすがに憲法改正が「理念なき改正」では困る。これらの点は大阪市民以外の日本国民も注視する必要がある。
加えて改めて、どのように政治を理解し、参加を促していくのかという問題が顕在化した。大阪はまだ都市部で、比較的若年世代が多いはずだが、世代別では圧倒的なボリュームと投票率を有する団塊世代の反対が目立った(過去の選挙では、有権者数で倍以上、投票率で1.5倍から2倍近い)。少子高齢化の社会では、人口動態上、今後も避けては通れない問題だが、政治への自明な関心の欠如が、数の少ない、若年世代の政治離れを促進しているということは繰り返し指摘されている。18歳への投票年齢の引き下げが眼前に迫るが、他方、その直接の政治的インパクトの弱さは今回の結果からも類推できる。
「政治を自分事化して投票にいくべきだ」という、投票年齢引き下げより遥か以前から繰り返されてきた規範的な提案は、実効性に乏しく、必然性にも欠ける。終戦や冷戦など、政治に半ば必然的に関心を持つ共通前提は変化した。「なぜ政治を自分事化できないのか」という問いを出発点に、歴史を紐解きながら政治理解と政治参加の導線を改めて考えていく必要がある。この点は、大阪都構想への賛成反対を問わず、そのプロセスを教訓としながら、将来の憲法改正の国民投票に向けて、双方共にポジティブに継承していくことが可能な稀有な論点なのではないだろうか。
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