[岩田太郎] 【佐藤元首相と安倍首相の「日本は巻き込まれない」】~米中もし戦わば 1~
Japan In-depth / 2015年5月28日 23時0分
実は、「巻き込まれてもよい」と本音を発した佐藤政権に対しての米側の要求は底なしだった。外務省の千葉一夫北米第一課長(当時)が官邸に直接上げた1969年4月1日付報告では、米軍がアジアでの作戦的自由を確保することに主眼を置いているとし、「朝鮮、ベトナムに留まらず、フィリピン、タイ、あるいは台湾も入ってくる。いくらでも拡がる」と警鐘を鳴らしている。しかし、1971年には在沖縄の米軍基地を中心に、在日米軍基地が朝鮮・台湾・ベトナム有事に対応できることが両国間で取り決められた。
そして1979年5月2日にジミー・カーター米大統領と会談した大平正芳首相(いずれも当時)は、さらに踏み込んで「米国はアジア大陸に隣接する日本に不沈空母を持っている。どうぞ、4杯の空母として自由にお使いください」と発言し、米側を驚かせたことが記録や証言に残っている。「日本を米国の戦争に巻き込んでください」と言わんばかりだったからだ。「不沈空母」に近い表現は、1983年1月18日の訪米時インタビューで当時の中曽根康弘首相も繰り返した。
日本が米国の戦争に巻き込まれる危険性は今に始まったことではなく、戦後70年の間に一貫して、日本の為政者と官僚が進んで現実化し続けた時限爆弾だ。それを歴代首相や外務省が誤魔化し、国民と野党が直視を避けてきただけだ。
(つづく。全4回。第2回は「日本国民を巻き込ませない政策を担保する方法」、第3回は「戦前日本と現代中国の『アジア人のためのアジア』」、第4回は「米中戦争は不可避か~中国の自己実現預言の自縛~」。)
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