[イ・スミン]【韓国を襲ったMERSの恐怖】~地に堕ちた政府に対する信頼~
Japan In-depth / 2015年6月14日 7時0分
「十数年以上ここで薬局を経営してきましたが、こんなにマスクと手指の消毒剤を多く売ったことはありません。昨日は一日に(マスクを)400万ウォン分ぐらい売りましたね。今はマスクはもちろん、消毒剤を作るため必要なエタノールも在庫がありません」(ソウルマポ区のある薬局)
「不安でマスクを買おうと薬局8箇所に行ったが一個もなかったし、インターネットでも買うことができませんでした。高い配送料を負担してでも買わないと思って、日本のアマゾンにマスクを注文しました。」(京畿道ソンナン市居住30代男性)
“パニック”それは、バーレーンに行った60代の男性が中東呼吸器症候群(MERSコロナウイルス※1)患者だと明らかになった先月20日以降、韓国の状況をありのままに表現した言葉だ。
言及した事例のように、自分と家族の健康を気遣う人々は薬局に押しかけ、マスクと手指消毒剤を購入し、人が集まる映画館とアミューズメントパークに足を運ばなくなった。大型スーパーに行く家族は減り、代わりにデリバリー・サービスを提供するオンライン・モールを利用する割合が、50%近くにまで増加した※2。
5月末から6月初めまでに予定されていたコンサートの多くは延期、またはキャンセルされた。そして6月2日から京畿道をはじめ、ソウル、忠清道など全国にわたって2,000校が休校を決定した。特に、最初の感染者が出た平澤市(ピョンテクシ)は「幽霊の都市」と言われるほど人気(ひとけ)がなくなった。マスコミでは昨年、韓国経済の足を引っ張ったセウォル号の沈没事故より悪影響を国内景気に及ぼすだろうという見通しを示している。
多くの韓国人たちは今「政府を信じられない」として、唯一の予防法と思われる、個人の衛生管理にしがみついている。2009年新型インフルエンザが流行った時、治療剤であるタミフルを手に入れるために市民たちの間に熾烈な争奪戦が繰り広げられた状況の再燃だ。ただ対象がマスクに変っただけだった。
韓国人だけがMERSに対する恐怖に包まれているのではない。 日本を含め香港、シンガポール、台湾など周辺国では韓国への旅行または出張のキャンセルが続いている。旅行業界によるとMERSの拡散以来、訪韓のキャンセル事例は10万件以上だ※3。
最初の感染者が登場した時にはこのような状況を予想する人はまれだった。特に中国から始まって全世界に広がったSARSの場合、当時の政府は拡散を封じ込めることに成功したことから※4、多くの韓国人はMERSを「遠い国の話」扱いした。しかし今回の未熟な判断がこの問題をコントロール不可能な規模にまで拡大させた。
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