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[岩田太郎]【派遣法で経済格差が拡大するなか中国と戦えるか】~憲法・戦争・経済の国会②~

Japan In-depth / 2015年6月27日 18時0分

最も重要なのは、「国民の自由を奪った悪法」とされる1938年の国家総動員法が、軍部による株主・会社経営陣・地主への所得集中を打ち破る統制を可能にしたことだ。まず、自己資本比率に対しておよそ10%だった配当の支払いが1939年から統制され、1940年には8%に制限され、1945年には5%まで下げられた。

一方、帝国政府は株主による会社重役の兼任に圧力をかけ、兼任率が下がって「資本と経営の分離」が進んだ。さらに市場に戦時公債の消化を奨励したため、株式や社債の生み出す利益は影響を受けて圧縮された。加えて1939年より労働者報酬を全産業均一に平準化させ、1940年には重役のボーナスの上限を設けた。

政府は1938年から食糧増産を目的として、地主から小作人に農地を再分配する政策を採り、小作料や地代も1939年より統制された。1942年制定の食糧管理法による米の公定価格による買い上げは小作人に有利で、地主は損をした。さらに1941年、土地と家屋の賃貸に関して、借り主の権利保護が強化された。これらの政策は、地主にとっての地価と家主の賃貸収入を押し下げる効果を持った。

追い打ちをかけるように個人・法人所得税が1937年、1938年、1940年、1942年、1944年、1945年に段階的に引き上げられ、税引き後利益が押し下げられた。それにより、株主と重役に支払われる配当とボーナスが抑えられたのである。

森口・サエズ両教授によると、「税務データが示すのは、所得や富の集中を砕いた最も重要な要因が戦後の占領政策ではなく、第2次世界大戦だったということだ。米軍占領期の改革による所得集中緩和の余地は少なかった。つまり、先行研究の多くがGHQによる改革の成果を過大評価していた」という。

戦前・戦中の日本は総力戦のため、資本主義が自ら社会主義的要素を取り込んで自己改造を遂げた福祉国家になりつつあった。しかし、岸の孫である安倍首相が推進する現在の経済政策は、日本の国力や戦力を削ぎ、中国を利するものだ。

(その3「国家による経済統制の岸、企業による経済統制の安倍」に続く。本シリーズ全3回)

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