[大原ケイ]【「美しい」同性婚合憲命令文は「正しい」のか?】~結婚を神聖化しすぎの声も~
Japan In-depth / 2015年7月2日 23時0分
(最初に「美しい」と表現してバズったサイトはこちらのようです。日本語訳を読みたい人はこのリンクを辿ってください)
命令文では、アメリカ合衆国憲法にいちいち書かれていない「自由」にも本質的な「適法手続き」があるべきで、それを政府(つまりは法律)で制限してはならないということが議論の基盤を成している。だからこの法廷において結婚が「大切だ」と判断されるので、よってその自由は犯してはならない、というのがロジックだ。
今回の判決では、反対派に回り、ケネディー裁判官の理論に飛躍があると指摘している4人の保守派裁判官の議論にもそれぞれ一理あるとされている。ケネディー裁判官がこのように最高裁の存在意義を過剰視するあまり、政府の力を信用しすぎで、議論が飛躍したりすることは今回が初めてではない。
ジョン・ロバーツ最高裁判長の反対意見では、その考えでは法廷の気持ち次第でどの自由が守られるべきなのかが判断されてしまうとこれを危惧しているのがうかがえる。超保守派のサミュエル・アリート裁判官に至っては、ケネディーが理想とする結婚像が世界共通のものではない点を指摘している。つまり、同性婚に反対している人々のように、子孫繁栄という目的を第一とした結婚こそが結婚だという価値観もあると。さらにそこには、結婚という選択をしない人がまるで市民としてワンランク下だという価値観があるのではないかと、クラレンス・トーマス裁判官が指摘している。
最高裁判所が同性愛者にも同等の結婚の自由が認められるべきであるとしたその結論には大いに賛成できるものの、そもそもアメリカの最高裁判所は、common law「コモン・ロー」という今までの判例の積み重ねによる合意を元に判断されるのが筋で、同性婚に反対する者から見れば新しい価値観の押し付けだという反論ができよう。あるいは、この新しい価値観は既に国民の過半数から支持され、新しいコモン・ローの一部になっていく新しい時代の幕開けとなったとも言えるだろう。
ちなみに、連邦最高裁判所はこうやって毎年100近い判決を下し、中にはアメリカ各州の政治方針をガラッと変えるほどの影響力を持つケースも多い。同性婚合憲判決の直前にはオバマ政権が推し進めてきた医療保険制度改革(オバマケア)を合憲とする判決が出たばかりで、この後も国内の死刑執行の是非を問うケースが続く。必ずしも法律の専門知識がなければ理解できないような難しい判決文ではなく、国民の一人一人に向けてアメリカという国に生きる意義を問うような問題に真っ向から取り組んだ上で書かれる裁判官の文章が美しくないはずがない。
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