[岩田太郎] 【国家による経済統制の岸、企業による経済統制の安倍~憲法・戦争・経済の国会 ③~
Japan In-depth / 2015年7月7日 23時0分
祖父の岸を敬愛する孫の安倍の時代にも資本主義は再び行き詰っているが、安倍は岸が築き上げた高所得・福祉国家という民生の安定基盤を、岸が対峙した放任型資本主義によって壊している。ある一面、そのようにして、自分に劣等感を感じさせる偉大な祖父を乗り越えようとしている。岸を模倣した経済統制によって最貧国だった韓国を高度成長させ、それ故に存在感が大きい父親・朴正煕の遺産を破壊し、乗り越えようとする韓国の朴槿恵大統領に似ている。
特筆すべきは、TPPや労働者の地位を低下させる改正派遣法と、現国会で安倍首相が推進する安保法制が、日本国民の主権や力を制限する手法と目的において共通することだ。岸が追求したものが国家による統制経済なら、安倍が目指すのは差し詰め米国を中心とする多国籍企業や投資家による統制経済だ。
祖父の柔軟性や国民福祉政策は、孫の狭量さや企業福祉政策と表面的には違うが、両人に共通するものがある。それは日米安保の護持を国民の安全や福祉に優先し、日本の主体を国民ではなく米国と仰ぐ姿勢だ。国民ではなく米国が主体だから、安倍政権が「国民の理解が不十分でも、安保法制を強行採決する」と明言するのは当然だ。理解が不十分な今こそ強行採決せねば、この先も成立しない。
今国会は、憲法・戦争・経済に関する従米レジームの根源的な虚構をあぶりだし、現在の行き詰りに対して各党が提示する処方箋の欺瞞をも明らかにした。与野党は党利を捨て、硬直した議論を超え、対中戦に勝つため個別自衛権が行使できる国軍創設・米国による片務的な集団自衛提供・労働者の権利向上・福祉回復などでお互い大胆に歩み寄り、国民が求める政策に基づき団結すべきである。
(本記事は【憲法より国民に対する責任法で権力暴走の抑止を】~憲法・戦争・経済の国会① ~ と【派遣法で経済格差が拡大するなか中国と戦えるか】~憲法・戦争・経済の国会②~ の続きです。本シリーズ全3回)
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