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[林信吾]【残された道は国ぐるみの“銀行管理”】~ギリシャ危機の真実 4~

Japan In-depth / 2015年7月17日 7時0分

[林信吾]【残された道は国ぐるみの“銀行管理”】~ギリシャ危機の真実 4~

「日本目線」で見る限り、ギリシャ危機は早くも一息ついた感がある。実際にギリシャ政府は、EU側の要求に沿った年金改革や増税といった財政再建策をあらためて提示し、EU側もこれを受けて、新たな金融支援を視野に入れた話し合いの再会に応じている。まったく、あの国民投票はなんだったのか。

ちょうど償還期限を迎えた円建ての外債、いわゆるサムライ債も返済された。200億円くらいの規模であったとは言え、ひとまずデフォルトは回避されたわけだ。ギリシャ以上に問題視されていた中国の株価下落も、中国の実体経済は言われているほど悪くない、という観測が示されたためか、日本の株価はすぐに持ち直した。

それにしても、日本のTV報道は、まったくひどい。相も変わらず「怠け者のギリシャ人が悪い」と言わんばかりで、問題の本質がまるで把握できていない。

私は昨年11月、こんな本を書いた。『国が溶けて行く ヨーロッパ統合の真実』(アドレナライズ刊)ヨーロッパ統合の歴史から、過去の混乱、ギリシャ問題までを網羅したものだ。

詳細はこの本に譲るが、そもそもどうしてギリシャのような国が、ユーロに加盟できたのかという問題を、ここであらためて見てみよう。もともとユーロに加盟するためには、財政赤字が対GDP比3%以下であることが条件とされていた。英国のブラウン財務大臣(当時。労働党政権)などは、この規定が厳格に守られていないのでは、と懸念を表明し、結局、加盟は見送られた。

もちろん、欧州中央銀行が然るべき審査をしたのだが、ギリシャはなんと、米国の有名な投資会社ゴールドマン・サックスにそそのかされて、カレンシー・スワップによる赤字隠しを行ったのだ。ひらたく言えば、ゴールドマン・サックスは巨額のドルを密かに貸し付け、あとでユーロでの返済を求めた。フランス議会を中心に専門の調査部会が起ち上げられているが、どうやら同社は、邦貨にして1兆円近い資金を動かし、数百億円の利益を得たらしい、というところまでしか、今のところ分かっていない。

やるに事欠いて「国ぐるみの粉飾決済」とは何事だ、という話で、某ドラマの銀行員ならずとも、これでは、「倍返しだ!」などと怒り狂うだろう。私が、まるで苛酷な取り立てを行っているようでも、公平に見てEUの側に理がある、と述べているのは、具体的にはこの点を指してのことで、ギリシャ人が怠け者だからいけない、といった次元の話ではないのである。

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