[遠藤功治]【本当に依存症ではなかったのか?】~トヨタ役員逮捕と麻薬“オキシコドン” 1~

Japan In-depth / 2015年7月21日 18時0分

[遠藤功治]【本当に依存症ではなかったのか?】~トヨタ役員逮捕と麻薬“オキシコドン” 1~

以下、この件につき、時系列で各種メディアの報道から引用します。

6月18日、警視庁は当時、トヨタ自動車の常務役員であるジュリー・ハンプ氏を逮捕、容疑は麻薬取締法違反。“オキシコドン”と呼ばれる麻薬を国際宅急便で輸入した疑い。“オキシコドン”は日本では麻薬に指定され、末期がん患者らの鎮痛剤などとして使用されている。医師の処方箋が無いと日本では購入できない。ハンプ容疑者は、麻薬を輸入したとは思っていないと容疑を否認している。

6月19日、豊田章男トヨタ自動車社長が夕方に緊急記者会見、“世間を騒がせ、誠に申し訳ない”と陳謝する一方で、“彼女は私にとっても、トヨタにとってもかけがえのない仲間であり、法を犯す意図はなかったということが明らかになることを信じている”とした。

6月23日、警視庁は、トヨタ自動車の豊田市本社、東京本社など3か所を家宅捜索、トヨタの歴史史上、初めての家宅捜索を受けることとなった。

6月30日、ジュリー・ハンプ容疑者は常務役員を辞任する旨、トヨタ自動車に提出、辞任は即日受理された。

7月8日、東京地検は、拘留期限の8日、ジュリー・ハンプ容疑者を不起訴(起訴猶予処分)として釈放。同容疑者は同日中に離日した。

これが今回のジュリー・ハンプ元トヨタ自動車広報担当常務役員逮捕の推移です。筆者はこの容疑者と面識も無ければ、この事件に関して、トヨタ関係者と話したこともありませんが、外から見て余りに、ちぐはぐ、かつ理解不能な対応や報道が随所に見られるので、今回は自動車業界の番外編として、ここで取りたいと思います。ここでの問題点は次の4つです。

オキシコドンという麻薬(麻薬との認識)。

トヨタ自動車、豊田章男社長の記者会見(対広報戦略)。

起訴猶予という結果(企業側のリスク管理対策)。

メディアの報道姿勢(第4権力の機能不全)。

さて、皆様、私ごとで大変大変恐縮ではございますが、筆者は“オキシコドン”について、それなりの知識を持っております。勿論、小職が使用している訳ではありません、誤解のないように。実は、筆者の母親が処方を受けているからです。写真は母親が実際に病院から処方を受けている、半径5mm程の小さな丸いピンク色の錠剤、日本ではシオノギが生産しており、薬名は“オキシコンチン”、まさに“オキシコドン”そのものです。

母親は膵臓がんの末期がん患者、既に82歳ですが、過去5年間で8時間以上の手術を3回受け、現在は実家療養と入院を数カ月単位で繰り返している状況です。抗がん剤と鎮痛剤(つまりオキシコドン)を処方されています。鎮痛剤は当初、モルフィネだったのですが、病状が悪化し痛みが益すとともに、いつしか、オキシコドンに変更となりました。現在では1日3回、朝6時、昼の2時、夜10時、即ち、8時間ごとに1錠ずつ飲む毎日です。

先日、やや症状が悪化したこともあり、再入院させる前に、実家に久しぶりに帰った時のこと、何故かこのオキシコドンが見つかりません。母親は終日、ほぼ寝たきりの生活ですが、オキシコドンが無いばかりに痛みが激しく、横になることもできません。週末で病院が休みであったこともあり、結局、筆者が夜通し、背中や腰をさすりながら、痛みを和らげようとしたのですが、当人からすると痛くて痛くて眠れない、母親は“痛いよー、痛いよ―”と泣きながら、殆ど一睡もせず、朝を迎えました。週明けです、すぐに病院に連れて行き、再度処方されたのが写真のオキシコンチン。それが1錠飲むと、嘘のように痛さが引け、本人はようやく床に就くことができました。オキシコドンというのは、その位強力な薬で、当然、日本だろうが米国だろうが、医師の処方が無ければ、患者は手に取ることさえ出来ない筈です。

それが実際に米国では、比較的容易に取得できるのは事実のようです。“ピルミル”とかいうタイプのクリニックで、例えば歯痛を和らげる目的で、簡単に処方される、それも大量に入手できるようです。大量に処方を受けるので、大半の場合は使用されず余ることが多く、それを個人間で売買取引・融通し合う、そんなことも多いようです。特別な医療目的以外で、不適切にそれも大量にオキシコドンを使用、腰や膝の痛みが和らぐ以上に、気分が良くなる、結果的にヘロインかコカインのような過剰摂取と依存症が深刻化する、所謂“ラリっている”状況、これが現在の米国で深刻な問題に発展している、ということです。

“米国では普通に処方されているのだから、日本が厳し過ぎ、今回の逮捕は行きすぎ、もっと日本でもオキシコドンを容易に入手できるようにすべき“、という意見があるように聞きますが、世も末だと思います。世界で使用されているオキシコドンの約80%は米国、との統計もあるようですが、その結果として、米国での乱用が問題とされているのなら、処方は更に厳格化されるべきであって、日本でもっと使用を緩めろというのは、日本で麻薬依存を蔓延させろと言っているのと同じで、本末転倒です。

このジュリー・ハンプ元役員、元々から膝痛でオキシコドンを処方されていたようですが、今回問題となった錠剤は、父親が送ってくれたもので、自分が処方されたものではないとのこと。また、容疑にある260錠以上の錠剤は、筆者の母親の3カ月分に相当します。貴方の膝痛は、膵臓がん末期患者の3カ月分の錠剤を必要とするような痛みであったのか、毎日毎日、その錠剤が無ければ、誰かが四六時中さすってあげなければいけないような、そんな痛みを伴ったものであったのか、また、誰が3カ月分の錠剤を処方してくれるのか、彼女にじっくりと聞いてみたい事柄です。

(【社長会見とメディアの姿勢に苦言呈す】~トヨタ役員逮捕と麻薬“オキシコドン”2~ に続く。このシリーズ、全2回)

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