[田村秀男] 【上海株暴落が暴露、“国際通貨”人民元の無謀ぶり】~SDR通貨認定を焦る中国~
Japan In-depth / 2015年7月21日 18時0分
上海株価の暴落は、習近平政権による人民元の国際化の無謀ぶりをさらけ出した。習総書記・国家主席は昨年から国際派の周小川中国人民銀行総裁を通じて、猛烈な勢いで人民元を国際通貨基金(IMF)の仮想通貨SDR(特別引き出し権)への組み込みをIMFに働き掛けてきた。SDRは米ドル、ユーロ、円、英ポンドの4大国際通貨で構成される。SDR通貨として認定されると、他の国際通貨と自由に交換できるようになるので、世界各国の中央銀行が外貨準備資産として持つことになり、信頼が高まる。国際金融市場で活発に取引されるようになる。IMFは5年に一度、SDR構成通貨を見直しており、ことしはそのタイミングである。
IMF理事会で唯一、拒否権を持つ米国はこれまで、中国に対し株式を含む金融市場の対外開放を強く求めてきた。IMFによるSDR通貨認定基準は、国際的に「自由利用可能」通貨であるかどうかであり、外国人投資家による中国株投資を厳しく制限している限り、米国の同意を得られることは難しい。
そこで、北京は昨年11月17日から香港証券取引所と上海証券取引所の相互取引を解禁した。外国人投資家は中国当局が設定した上限の範囲内で香港市場から上海株を売買できるようになった。中国人投資家も同じく上限付きで上海市場経由で香港株式市場での売買が可能になった。
習近平政権はその相互取引に合わせ、株価の引き上げに全力を挙げてきた。人民銀行は利下げして、投資家が借金して株を売買する信用取引をてこ入れし、党機関紙の人民日報は株式ブームを煽った。
多くの中国人は党が株価押し上げ指令を発しているから、株価は上がると信じ込み、信用買いにのめり込んだ。株価の上昇速度が鈍ると、人民銀行は追加利下げし、株価上昇を後押しした。多くの国有企業は株式ブームに便乗して、過剰な設備投資や不動産投資失敗などで累積した債務を返済する目的もあって、株式の新規公開や増資でコスト・ゼロの資金を調達してきた。平均株価はこの6月初旬までの1年間で2倍以上に上昇した。半面で、実体経済のほうは停滞が続いているので、株価は明らかにバブル状態である。
そんな不安が漂っている中で、6月12日金曜には最高値をつけたが、週明けの月曜から暴落が始まった。その引き金を引いたのは、香港経由の「外国人投資家」のようだ。米ウォールストリート・ジャーナル紙6月23日付けによれば、6月3日までの3週間で上海など中国の証券市場に外部から73億ドルの資金が流入したが、翌週には68億ドルが一挙に流出したという。SDR認定をめざして、香港ルート向けに部分的に門を開けたら、激しい投機売買にさらされ、暴落が始まった、というわけだ。北京当局は外国の投資ファンドの空売りが背後にあるとみている。
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