[遠藤功治]【驚異の微細精密印刷技術、車のシート世界シェア16%】 ~“キラリと光るダイヤモンドの原石企業” 福井県編「セーレン」2~
Japan In-depth / 2015年7月28日 11時0分
セーレンの昨年度総売上高の約55%が自動車用資材であった。ここには、車のシートの生地やエアバッグの素材などが含まれる。日系自動車メーカー全社にシート材を供給、その世界シェアは約16%、世界で走っている日本車の3台に1台は当社製品を使っている計算。世界生産シェア同様、トヨタ・日産・ホンダ向けが売上上位。この自動車のシート生地と言っても、軽自動車用の安価な製品から、高級車用の本革仕様まで、表面に凹凸があるものから、滑らかに加工したものまで、様々な形状や色彩・模様の製品があり、それこそバリエーションは数限りなく多い。その超多品種生産を可能にしたのが、当社独自のビスコテックスという技術である。ここで当社の第3の脱皮というか、当社が完成させた革新的技術基盤であるビスコテックスについて解説が必要だろう。
ビスコテックスとは、“Visual Communication Technology System”の略、即ち微細精密印刷技術である。従来の方式では20色程度の平面のデザインにしか対応出来なかったものが、当社の技術では、コンピューター上のデジタルデータを基に、1,677万色の色を忠実に再現出来、色彩だけではなく、表面の凹凸や手触り、光沢なども忠実に表現できる、常識的な印刷の領域を超えたシステムである。
その印刷機械はほぼ1日24時間、ほぼ無人の工場で大量生産、過大在庫・欠品もなく、小ロット・短納期で対応出来、かつデザインの変更等も瞬時にこなす。車のシート素材、衣料、建材から、スタジアムの応援幕、百貨店やビル壁面に垂れさがる広告幕、また、北陸新幹線グランクラス入口に施された加飾側面など、その応用範囲は極めて広い。当社の福井や東京本社には、ビスコテックスによる、ゴッホやミレ―の絵画が数多く飾ってあるが、一見するだけでは、本物と殆ど見分けがつかない。このビスコテックスの技術的確立が、当社第3の脱皮、技術的な革新となり、当社の多岐な製品群の生産を可能にした。
当社製品群で、自動車に続くものがファッション関連、当社売上の約27%を占める。当社の元祖とも言うべき事業で、永らく国内外のアパレル業界に多用なファッション衣料製品を供給してきた。だが、ここ数年は業界の環境厳しく、顧客の海外生産移管や為替変動による価格競争などにより、業績は低空飛行を続けた。昨年後半から、生地だけでなく製品化比率の拡大や、国内消費の改善、また在庫を持たず、欲しい時に欲しいものだけ、という世界初のパーソナルオーダーシステムの開発などにより、ようやく大底を抜け、回復期に入りつつある。タイでの海外生産も軌道に乗ってきた模様。
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