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[神津伸子]【嬉しかった王さんからの電話】~「野球は人生そのもの」江藤省三物語 9~

Japan In-depth / 2015年8月1日 11時0分

大学生とは孫と祖父のような年回りで、選手たちは皆、可愛かったが、野球に関しては、監督と部員という距離、信頼関係を作っていた。グラウンドを出て、一緒に飯を食いに行ったら、情が移ってしまって、采配にも影響して来てしまう。助監督の竹内秀夫が選手たちと横目で見ながら、少し羨ましくもあった。

そうこうして作り上げた江藤監督就任1年目のチームは、2010年春のリーグで、11季ぶり32度目の優勝に、輝いた。この優勝が1番嬉しかったと、振り返る。悩み抜いた上での、監督就任など様々な思いが交錯した。
優勝の瞬間は、9回最後まで、グラウンドの選手たちに細かいサインで指示を与えていたため、就任初優勝の瞬間、いったい何が起きたか、最初は一瞬わからなかったと話す。

斉藤祐樹投手(日本ハム)ら、ドラフト1位指名3投手を相手に、勝った方が優勝という天王山早慶戦を制した勝利は格別だった。胴上げされ、男泣き。優勝後、尊敬する王貞治からも一番に祝福の電話が入り、歓喜した。
翌年の春も勝ち、春シーズンは2連覇となった。



選手では、伊藤、福谷(中日)、白村(日本ハム)をプロに送り込んだ。彼らはこれからも、楽しみと話し、目が離せない。福谷がインタビューで「『江藤監督が、大学生は毎日がオフじゃないか』と話されていたことが、プロになった今、しみじみと実感する」と、話していたことに「やっとわかってくれたか」と、目を細める。きつい練習をしている時だって、休みの日だって、学生は好きでやっているのだから、それはオフ。「プロはオフが無い。移動の時だって、それはオフではない」と、江藤の目は厳しくなる。

福谷は救援投手として、厳しい場面で登場することが多い。四球を連発してアウトが取れずに自滅、相手チームに勝利を献上した試合が続いたタイミングが合った。江藤は、そんな辛い状況の教え子に、アドバイスを球団代表に託した。
「自分を信じて投げろ。マウンドはたった一人なのだから。ここは何とか抑えようとか考えるな。自分は打たれるはずがない!と思って投げろ」。名将の指導は、永遠に続く。

4年間の任期を、無事終えたが、2014年春のリーグで後任の竹内秀夫監督が病床にあったため、助監督の立場で指揮を取り、3たび優勝。表彰式後の記念撮影では、主務の田中が竹内監督の30番のユニフォームを手に取り、一緒に収まった。本人にもいい報告が出来て、嬉しかった。

とにかく、負けても選手たちを責めないこと。明日、勝てばいいじゃないか。その精神だった。負け試合の後でも「まあ、風呂にでも、入ってこいや」ってね。
選手たちも、負けると怒られると思ったのか、きょとんと最初は驚いていた。その指導を受けてから、自ら上手な気持ちの切り替えを実践するように、精神的にも成長していった。試合に負けても、翌日のグラウンドの練習は明るく、集中力も素晴らしかった。

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